三毛猫の遺伝学
1.W遺伝子
全身を白くするW遺伝子はどれよりも強烈な優性遺伝子
W遺伝子を持った猫は白猫になる。白猫以外の猫はwwのホモ接合体である。
2.A遺伝子
アグーチ遺伝子(A)のある猫は縞猫になる。ノンアグーチ(aa)の猫は単色黒色になる。
3.S遺伝子
>白斑を形成するS遺伝子があると白スポットが入る。
4.O遺伝子
wwでOがあると,A遺伝子の型に関係なく,赤い色になる。
O遺伝子はX染色体の上にある。雄でOを持っている猫は必ず茶(赤)が出る。
雌は,OOのホモだと雄と同じ結果になり,Ooのヘテロ接合体の場合がややこしいことになる。
5.Oo遺伝子型のナゾ
- 優性遺伝子Oは,アグーチ(A)遺伝子を抑えて,茶色(オレンジ色)を発現させるので,OOだと茶色の猫になる。
- 劣性遺伝子oは,茶色を発現せずにアグーチ遺伝子を発現させるので,ooだと黒っぽい毛の猫となる。
メンデルの法則に従うと,優性遺伝子と劣性遺伝子があるOo場合,優性遺伝子Oが発現し,茶色の猫が生まれるはずである。しかし,茶色Oと黒色oの斑の猫が生まれる。
何故か???
Oとoの両方が発現してしまうのは,何故か?
優性形質と劣性形質の両方が発現するのは,Oとo対立遺伝子がX染色体にあり,そのX染色体がランダムに不活性化してしまうため
6.X染色体の不活性化
メスに見られる現象で,胚発生の初期に起こる。
正常なメスは2本のX染色体をもつ。X染色体の自己複製の際,全く同時に複製される訳ではない。
この遅れて複製されるX染色体が不活性化される。
また,父親由来,母親由来の2本のX染色体のうち,どちらが不活性化されるかはランダムに起こる。
この現象はライオニゼーション(lyonization)とも呼ばれ,不活性化された染色体をバー小体(Barr body)ともいう。
男性と女性における X 染色体の均等化の詳細についてはこちら
7.三毛猫のオスが生まれない理由
オスはO遺伝子,またはo遺伝子が座位するX遺伝子が1本しかないために,正常なオスでは三毛猫は生まれない。
しかし,ごく稀に三毛猫のオスは生まれるのはなぜか?
オスなのにX染色体を2本(以上)もつ,XXYのような性染色体異常=クラインフェルター症候群(OoY)
XXYはネコだけではなく,イヌ,ブタ,ウマ,そしてヒトにも出現することが知られている。
発症率は500人に1人。ネコの場合,3万匹に1匹ぐらい。(『三毛猫の遺伝学』ローラ・グールド著)
8.タビーパターン
9.まとめ
- 正常なオスはX染色体が1本なのでOまたはo遺伝子を一つしかもてない。そのため,茶または黒斑となり,三毛猫(白,茶と黒の斑)として生まれてくることはない。
- しかし,クラインフェルター症候群というX染色体を2本もつXXYのオスが生まれることがあり,このXXYオス猫がO優性遺伝子とo劣性遺伝子をもったとき,三毛猫として生まれてくる。
- クラインフェルター症候群のオス猫が生まれてくるのは3万匹に1匹という非常に低い確率のため,三毛猫のオスはほとんど見られない。
10.その他の遺伝子
B > b > bl
B-black/brown,b-chocolate,bl-cinnamon