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血液型


Kimball


29 December 2010 版を翻訳一部改変

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血液型は,赤血球の細胞表面に存在する分子によって決まる。

ABO 式血液型

ABO 式血液型が最初に発見され ( 1900 年 ) ,輸血時の安全性確認に重要な役割を果たしている。

表には,ヒトにおける 4 つの ABO 表現型 ( 血液型 ) とそれらを決定している 遺伝子型 を示す。

血液型赤血球抗原血清中抗体遺伝子型
AA抗-BAA または AO
BB抗-ABB または BO
ABA と BなしAB
Oなし抗-A と 抗-BOO

1 つまたは両方の抗原をもつ赤血球がその抗体に暴露されると,凝血反応が起こる。我々は,自身と関係ない赤血球抗原に対する抗体を通常持っている。

抗-A 抗体を含む血清を加える前 ( 左 ) と後 ( 右 ) のヒト赤血球細胞。凝集反応によって,赤血球細胞の表面上に A 抗原があることが明らかである。

ABO式血液型における抗原は,細胞表面に露出している糖鎖をもつO結合型糖タンパク質である。

輸血の際には,レシピエント の抗体が凝集する赤血球を含んでいてはならない。理論的には,O 型の血液はすべてのレシピエントに輸血可能であるが,注入された血漿中の抗体がレシピエントの赤血球を損傷することがある。 したがって,輸血は完全に一致した血液で行うべきである。

なぜ我々は,自身がもたない赤血球に対する抗体を持つのか? 我々の腸内に生息する細菌やある食物も,A や B のような抗原決定基をもっている。対応する抗原決定を持っていなければ,すなわち我々の免疫系がそれらを「 自己 」ではなく,「 異物 」として認識した場合,我々はこれらに対する抗体を合成する。

Rh 式血液型

Rh 抗原も赤血球の細胞表面に発現する。これらは最初にアカゲザル rhesus monkey で発見されたために,この名称がついている。

多数の Rh 抗原が存在し ( その最も一般的にみられるのが D 型である ) ,これらはすべて “Rh 陽性” の赤血球をつくる。ヒト集団の約 15% は Rh 抗原をもたない。すなわち,”Rh 陰性” である。

ヒトの Rh システムで最も気をつけなければならないのは,母体と胎児間の Rh 不適合性である。

出産時に,新生児の赤血球が母体血流に入り込むことがある。新生児が Rh 陽性で ( 父親から受け継いでいる ) ,母親が Rh 陰性の時,母体内で Rh 抗原に対する抗体が産生される。この抗体 ( 通常 IgG ) が,次の妊娠時に胎盤を通過し, Rh 陽性の胎児赤血球を異物とみなして,攻撃してしまう。赤血球が破壊されたために,貧血 や黄疸が生じる。

これは 胎児赤芽球症 erythroblastosis fetalis または 新生児溶血性疾患 hemolytic disease of the newborn と呼ばれ,非常に重篤の場合には胎児 ( 新生児 ) の死亡につながることがある。これは抗体が関わる細胞毒性疾病の例である。

( Rh 型の他にも ) 特定の赤血球抗原が胎児に対して影響を与えてしまうが,ABO 型では血液型不適合は起こらない。それなのになぜ, Rh 不適合が非常に危険なのか?

ほとんどの抗-A 抗体や抗-B 抗体は IgM クラスである。これらは胎盤を通過しない。事実,Rh+/ A, B, または AB 型 の胎児をもつ Rh/ O 型 の母親は Rh 抗原に対する感作に抵抗性を示す。おそらく,母親の抗-A 抗体と抗-B 抗体は,体内で抗-Rh 抗体を発現させる前に,彼女の血中に侵入してきた胎児細胞をすべて破壊してしまうのものと考えられる。

この現象から,Rh 感作を回避する非常に有効な予防対策が考案された。 Rh+ 赤ん坊の誕生の直後に,母親に抗-Rh 抗体が注入される。その製剤は,Rh 免疫グロブリン ( RhIG ) あるいは Rhogam と呼ばれる。このように与えられた抗体によって,母親の免疫反応が誘起される前に彼女の血中に入ったすべての胎児細胞を破壊してしまう。

Rh


 

その他の血液型

他のいくつかの血液型抗原もヒトで認められている。たとえば,MN 型である。

この血液型でも ( ABO または Rh 不適合ではないのに ) ,

  • 輸血反応や,
  • 新生児溶血性疾患も起こる例が報告されている。

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February 28, 2020

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