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血液

血液は液体組織である。7 種類の細胞ならびに細胞物質が液体成分である 血漿 に含まれる。[主な血球の種類と形態はこちら

  • 赤血球 red blood cell ( RBC ) , erythrocyte
  • 血小板 platelet, thrombocyte
  • 5 種類の白血球 white blood cell ( WBC ) , leukocyte

 

血液サンプルと採取した場合,凝血しないように処理して遠心分離すると,

  • 赤血球は遠心管の底に沈み,
  • 白血球はその上に沈み,黄淡色の膜のようなものを形成する。

赤血球のによって占められる分画は ヘマトクリット hematocrit と呼ばれる。通常は約 45% ( ヘマトクリット値,または赤血球容積率 ) である。この値より著しく低い場合は 貧血 anemia の兆候である。

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血液の機能

血液には主に 2 つの機能がある。

  • 物質輸送 - 以下のものを体中に輸送する:
    • 酸素と二酸化炭素
    • 栄養分子 ( グルコース,脂質,アミノ酸 )
    • イオン ( たとえば, Na+, Ca2+, HCO3 )
    • 老廃物 ( たとえば,尿素 )
    • ホルモン
  • 病原菌や異物からの防御 - すべての白血球がこの役目を果たす。

 

血球の形成 ( 細胞の型と略号を以下にまとめる )

すべての型の血球は,

これらの細胞の模式図はこちら
  • 骨髄 bone marrow で形成される ( 成人では毎日約 1011 にもなる! )。
  • 多能性幹細胞 pluripotent stem cell と呼ばれる細胞から生じる。

これらの幹細胞は:

  • 非常に限られた数である ( 骨髄細胞 10,000 個に約 1 個程度である ) 。
  • CD34 と名付けられた表面タンパク質を発現する。
  • 有糸分裂によって,2 種類の後継細胞をつくる。
    • 多くの幹細胞
    • 種々の血球になる経路に沿って分化し始める細胞

分化の経路は,以下によって制御されている:

  • 血球の種類によっては複数の経路があり,それぞれ適正な サイトカイン cytokine ならびにホルモンによって制御されている。


 
例:

  • リンパ球 – Interleukin-7 ( IL-7 ) が骨髄幹細胞を刺激して,種々のリンパ球( 主に B 細胞 と T 細胞 )になる経路を開始させる主要因子である。
  • 肝臓から分泌されるホルモン スロンボポエチン thrombopoietin ( TPO ) が 巨核球 megakaryocyte ならびに赤血球 に導く経路を開始させる。
  • 赤血球 – 腎臓によって生産される エリスロポエチン erythropoietin ( EPO )( 赤血球生成促進因子 )によって,赤血球の生産が促進される。
  • 血小板 – スロンボポエチン ( TPO ) がインターロイキン-11 ( IL-11 ) の作用と共に, 巨核球の生産とそれらの血小板への細分化を刺激する。
  • 顆粒球-単球コロニー刺激因子 ( GM-CSF ), 名前の示すとおり両方の細胞種への経路を開始する。順を追って経路が進行していく。
    • 顆粒球コロニー刺激因子 ( G-CSF ) の影響下で,好中球 へ分化する。
    • さらに,インターロイキン-5 ( IL-5 ) によって刺激され,好酸球 に分化する。
    • インターロイキン-3 ( IL-3 ) がほとんどの白血球の分化に関与するが,とくに 好塩基球 への分化には特別の役割を果たす。p
    • Stimulated by マクロファージコロニー刺激因子 ( M-CSF ) によって刺激されると,顆粒球・マクロファージ前駆細胞は 単球 ,すなわち マクロファージ の前駆体へ分化する。

 

赤血球

血球の最も多い細胞種で,

  • 女性では平均で約 4.8 x 106 ( mm3, microliter [µl] )
  • 男性では平均で約 5.4 x 106 /µl
  • この値は健康状態や高度などの要因で大きく変動することがある ( 高地 18,000 フィート に住むペルー人は 8.3 x 106 RBCs /µl と高い )。

おもな機能は酸素の運搬で,これは赤血球の中に含まれているヘモグロビン ( 血色素 ) の働きによる。

1 g のヘモグロビンは最高 1.39 ml の酸素を結合することができる。肺で大量の酸素を結合した動脈血は毛細血管を流れるとき,その場の組織に酸素を供給して静脈血となる。ヘモグロビンは,酸素の圧力が低く二酸化炭素の圧力が高い組織で,容易に酸素を放す性質をもっている。

右図は赤血球の特徴的な形状 ( 両凹面 ) を示す走査型電子顕微鏡写真である。赤血球は中央部がへこんだ形をしているため表面積が広くなっており,またこのような形は細い毛細血管を赤血球がくぐり抜けるときも形を変えやすい。

赤血球は肺から組織に酸素を能率よく運ぶために,高度に機能化された血球である。

赤血球の前駆体は骨髄で成熟する時に,

  • 細胞の乾物重量で約 90% の割合に達するまでヘモグロビンを生産する。
  • 核が細胞から離脱し,近くのマクロファージがその核を取り込み,DNA を分解してしまう。

このように,赤血球は最終的に分化し,もう分裂はしない。約 120 日間生存し,その後肝臓ならびに脾臓の貪食細胞によって消化される。ヘモグロビン内の鉄のほとんどが再利用されるために回収される。ヘム部分子の残りの部分は分解され,胆汁色素となり肝臓から排出される。毎秒 3 百万個の赤血球が死に,肝臓から排出されている。

赤血球は 酸素 と 二酸化炭素 の運搬をする。


 

酸素輸送

ヘモグロビン ( Hb ) 分子は,

  • 4 個のポリペプチドから成り,
  • そのそれぞれに補欠分子族,ヘム heme が結合している。
  • 各ヘムの中央には鉄原子が 1 個ある。
  • 酸素 1 分子が各ヘム鉄に結合する。

この反応は可逆的である。

  • 肺の毛細血管における低温,高い pH および増加した酸素分力の条件下では,反応が右方向に進行する。静脈血の赤紫色の脱酸素ヘモグロビンは動脈血の鮮紅色の酸素ヘモグロビン oxyhemoglobin になる。
  • 組織中の高温,より低い pH およびより低い酸素分力の条件下では,逆の反応が促進され,酸素ヘモグロビンはその酸素を離脱しやすくなる。

 

二酸化炭素の輸送

二酸化炭素 ( CO2 ) は水と結合して炭酸となり,それは水素イオン ( H+ ) と重炭酸イオンに解離する:

CO2 + H2O <-> H2CO3 <-> H+ + HCO3
組織中で生成された CO2 95%が赤血球で運搬される:

  • このうち約半分がヘモグロビンに直接結合している ( 酸素の結合部位とは異なる ) 。
  • 残りは,上記の化学式の通り 炭素脱水素酵素 carbonic anhydrase によって,以下の通り変換される。 into
    • 重炭酸イオン,これは血漿に拡散して戻っていく。
    • 水素イオン ( H+ ) ,これはヘモグロビンのタンパク質部分に結合する ( このように,pH には影響がない ) 。

組織で生成された CO2 の約 5% だけが,血漿に直接溶解する。( よくしたもので,我々が作る COがすべてこの方法で運ばれた場合,血液の pH はその通常の 7.4 から即座に致命的な 4.5 にまで低下するだろう! )

赤血球が肺に達すると,これらの反応が逆転し, CO2 が肺胞の空気に放出される。

 

貧血

貧血は,

  • 赤血球の欠乏,または
  • それらの内部のヘモグロビン量の欠乏による。

貧血はいろいろな原因で起こるが,最も一般的な原因は鉄摂取不足である。

 

血液型

赤血球は,細胞表面に抗原を持っている。これは,人によって異なり,ABO 型のような血液型に分類される。

血液型の詳細についてはこちら

 

白血球

白血球は,

  • 赤血球ほど多くはない ( 両者の比は約 1:700である ) ,
  • 核をもつ,
  • 感染から体を護るのに働いている,
  • 明るい細胞質をもつ リンパ球 と 単球,ならびに細胞質が顆粒で満たされている 3 種類の 顆粒球 から成る。

 

リンパ球

( 顕微鏡ですべて似ているように見えるが )いくつかの種類のリンパ球があり,それぞれ特有の機能を持つ。最も一般的なタイプのリンパ球は:

  • B リンパ球 ( “B 細胞” ) – これらは抗体を作るのに働く。
  • T リンパ球 ( “T 細胞” ) – これらにはいくつかのサブセットがある:
    • 炎症性 T 細胞 – これは感染部位または組織損傷部位へマクロファージや好中球を補充する。
    • 細胞傷害性Tリンパ球 ( CTL ) – これはウイルス感染細胞,またおそらくガン細胞も死滅させる。
    • ヘルパー T 細胞> – これは B 細胞による抗体の生産を増強する。

骨髄がリンパ球の生産の場であるが,T 細胞になるリンパ球は骨髄から胸腺 [ 免疫システム概要図 ] まで移動し,そこで成熟する。 また,B 細胞および T 細胞の両方はリンパ節,脾臓などにも多量に存在する。そこで,これらの細胞は:

  • 抗原に遭遇し;
  • 有糸分裂によって分裂を続け;
  • 成熟して,十分に機能をもった細胞になる。

 

単球

単球は血管から離れ,マクロファージ macrophage となる。

この走査型電子顕微鏡写真は,いくつかのリンパ球によって囲まれた 1 個のマクロファージを示す。

マクロファージは大型で,貪食細胞である:

  • 体内に侵入した他異物 ( 抗原 ) を取り込む。
  • 体内の死亡細胞や死にかかっている細胞を取り込む。

好中球

白血球の中で最も豊富。右の写真は,赤血球によって囲まれた 1 個の好中球を示す。

好中球は,毛細血管壁を通り抜け,感染組織に移行する。そこで侵入者 ( 例えば細菌 ) を殺し,次に 食作用 phagocytosis によって残りを取り込む。

これは健康な人でも終わりのない作業である。我々の喉,鼻腔および大腸には,莫大な数の細菌が住み込んでいる。これらのうちのほとんどは共生関係があり無害であるが,好中球が常にこれらを監視しているのである。

しかし,

  • 多量の放射線照射,
  • 化学療法,
  • ならびに多くのストレスによって,

好中球が減少すると,それまでは無害であった細菌が増殖し始める。その結果,日和見感染 が起こり生命に危険なことがある。

 

好酸球

血液中の好酸球の数は通常とても低い ( 0 – 450/µl ) 。しかしながら,それらの数は,ある疾病 ( とくに寄生虫による感染病 ) の際に急激に増加する。好酸球は細胞傷害性をもち,侵入者に対して顆粒の内容物を放出する。

好塩基球

好塩基球の数も感染中に増加する。 好塩基球は血液から離れ,感染部位または炎症部位に蓄積する。そこで,顆粒の内容物を放出して,以下のような物質を出す:

  • ヒスタミン
  • セロトニン serotonin
  • プロスタグランジンとロイコトリエン leukotrienes

これらは,その部位の血流量を増加させ,また他の方法で炎症を起こす。好酸球によって放出された物質によって,アレルギー反応が起こることもある:

  • 花粉症や
  • 虫さされに対するアナフィラキシー反応

 

血小板

血小板は 巨核球 megakaryocytes から生じた細胞断片である。

血小板は,通常 150,000 - 450,000 /µl 含まれる。この値が 50,000/µl 以下に低下すると,血小板が血液を凝固させることができない出血の危険がある。

血小板の役割は出血を停止させること,すなわち止血作用である。

血小板の中には,カルシウム,アデノシン二リン酸 ( ADP ) ,凝固因子など止血に際して重要な働きをする物質が含まれている。

血管壁が破れると,血管壁の膠原(こうげん)繊維に多数の血小板が粘着し,つづいて血小板どうしが互いに凝集して止血栓をつくって血管の破れた部位をふさぐ。

血小板が凝集するとき,もっていた物質を放出し,この物質が凝集をさらに強固にするとともに,血漿中の凝固因子の連鎖反応をよび起こし,フィブリンによる繊維網が形成されて出血部に強力な止血のための血栓が形成される。この過程を 血液凝固 という。 凝血は,

  • フィブリン fibrin 分子の網の目に絡まった
  • 血小板 の塊である。

 

血漿

血漿 Plasma は血球を浮遊させる液体である。

血漿の成分
成分 パーセント
水分 ~92
タンパク質 6-8
塩分/TD> 0.8
脂質 0.6
グルコース ( 血糖 ) 0.1

血漿は細胞に必要な物質ならびに細胞から排泄される物質を輸送している。すなわち:

  • 種々のイオン ( Na+, Ca2+, HCO3, etc. )
  • グルコースや他の糖
  • アミノ酸
  • その他の有機酸
  • コレステロールならびに他の脂質
  • ホルモン
  • 尿素や他の老廃物

これらのほとんどは,以下の部位で血液中に移行し,

  • 物質の交換 ( 腸など )
  • 物質の貯蔵 ( 肝臓など )

血液から,以下の部位へ分配される。

  • すべての細胞
  • 物質の交換 ( 腎臓や皮膚など ))

 

血清タンパク質

タンパク質は血液の 6 – 8% になる。それらはほぼ 血清アルブミン ならびに多種多様の 血清グロブリン に分けられる。

血液を採取して凝固させると,凝血は徐々に収縮する。それに伴い,血清と呼ばれる明瞭な液体が分離し始める。したがって:

血清 は血漿からフィブリノゲンおよび他の凝固因子を取り除いたものである。

血清タンパク質は電気泳動で分離することができる。

  • 血清 1 滴を寒天などの薄い支持体に乗せ ( アルカリ溶液 pH 8.6 がしみ込んでいる ),
  • タンパク質は負に荷電しており,その程度はタンパク質の種類によって異なる。
    pH がどのようにタンパク質の荷電状態に影響するかはこちら
  • 緩衝液の導電性のために直流電流が支持体を流れる。
  • 電流に伴い,血清タンパク質が陽極へ移動する。
  • 負の電荷が強いタンパク質ほど速く移動する。
  • 一定時間後,タンパク質を染色すると泳動パターンが確認できる。
  • 分離したタンパク質は明瞭なバンドをして認められる。
  • これらのうち最も量的に多く,陽極に近く移動するのが 血清アルブミン である。
  • 血清アルブミンは,
    • 肝臓でつくられ,
    • 血中を移動する多数の小分子に結合し,
    • 血液の浸透圧を維持する助けとなる
  • 他の主要タンパク質は血清グロブリンである。
  • これらは以下の順番で泳動する。
    • アルファ・グロブリン alpha globulin ( たとえば,サイロキシン thyroxine 【甲状腺ホルモンの一種】)とレチノール retinol 【ビタミン A】を輸送するタンパク質 )
    • ベータ・グロブリン beta globulin ( たとえば,鉄イオン輸送タンパク質 トランスフェリン transferrin )
    • ガンマ・グロブリン gamma globulin
      • ガンマ・グロブリンは血清タンパクのうちで最も負の荷電が少ない。
      • ほとんどの抗体はガンマ・グロブリンである。
      • ガンマ・グロブリンが感染症や予防接種のあとに増加する。抗体を分泌する細胞( 形質細胞 plasma cell と呼ばれる )がガン化すると,1 種類の抗体しか分泌しないクローンとなる。右の写真は,左から右に,
        1. 正常 なヒト血清 – ガンマ・グロブリンのバンドは拡散していてぼやけている。
        2. 多発性骨髄腫 multiple myeloma の患者の血清 – IgG 骨髄腫タンパク質が生産されている。
        3. ワルデンストローム・マクログロブリン血症 Waldenström’s macroglobulinemia の患者の血清 – ガン化したクローンが IgM 抗体を分泌している。
        4. IgA 骨髄腫タンパク質をもつ血清

 

血清脂質

心疾患との関係のために,血清脂質の分析は重要な検査項目になっている。

表には標準値の範囲を示す。

脂質 標準値 ( mg/dl ) 最適値 ( mg/dl )
全コレステロール 170-210 <200
LDL コレステロール 60-140 <130
HDL コレステロール 35-85 >40
中性脂肪 40-150 <135
  • 全コレステロールは以下の合計である:
    • HDL コレステロール
    • LDL コレステロール
    • 中性脂肪値の 20%
  • Note that
    • 高い LDL 値は要注意である。
    • ただし,高い HDL 値はとくに問題はない。
  • これらの値を用いて,〈 心疾患のリスク比 = 全コレステロール ÷ HDL コレステロール 〉 が計算できる。
  • この比が 7 以上の場合は要注意である。

 


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February 05, 2020

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