電離放射線
生物機能に関連する放射エネルギーの形態としては,光線,熱線,ならびに電離放射線がある。電離放射線 Ionizing radiation は細胞に透過し細胞内容物にイオンを形成する。これらの影響が DNA の変化を引き起こすことにも成り,その結果 突然変異 が誘発される。
電離放射線は以下を含む:
- X 線
- γ 線
- 中性子線
- β 線 ( 電子線 )
- α 線 ( 電気素量の 2 倍の電荷を帯びるヘリウム原子核の粒子線 )
測定単位
ラド rad
物質 1 kg 当り 1/100 J のエネルギーが与えられるときの吸収線量が 1 rad である。癌などに対する放射線治療では,数百~数千radの吸収線量が患部に与えられる。1980年代の後半からは,吸収線量の単位として,以前から使われてきたラドに代り,新しい単位グレイ ( 記号 Gy ) が用いられることになっている。1 Gy は 100 rad に等しい。
レム rem
線量当量の単位で,放射線被ばく量を表す。たとえば,γ 線と中性子の生物学的影響をみたとき,一般に吸収線量が同じでも中性子の方が γ 線よりも影響が大きい。
これは両者のエネルギーの与え方のちがい,すなわち放射線がある物質中を進むとき,単位長さ当りに与えたエネルギー keV/μm ) に関係する。そこで,線質係数 Q で 吸収線量 rad を加重した 線量当量 rem が放射線防護の目的に用いられる 《 rem = rad x Q 》。
線質係数 Q には,X 線,γ 線,β線,電子線で 1 ,中性子で 5 ,陽子,重陽子線で 10 ,α 線や重荷電粒子では 20 が用いられる。
たとえば, 1 rad の中性子とα 線は,それぞれ 5 rem と 20 rem に相当する。1980 年代の後半からは,線量当量の単位として,レムに代り新しい単位シーベルトが用いられることになっている。
シーベルト sievert ( Sv ) とグレイ gray ( Gy )
シーベルトは, 1979 年国際単位系 ( SI ) の単位として採用された線量当量の単位。名はスウェーデンの物理学者シーバート Rolf Maximillian Sievert ( 1896 – 1966 ) にちなんでつけられた。以前は,レム ( rem ) が線量当量の単位として用いられた。新しい SI 単位では Sv ( シーベルト ) が用いられる。
1 Sv = 100 rem である。
同様に,グレイは 1975 年国際単位系 ( SI ) に採用された物質に吸収された放射線のエネルギー ( 吸収線量と呼ばれる ) の単位。名は,イギリスの放射線物理学者グレー L. H. Gray ( 1905 – 65 ) にちなんでつけられた。以前は,ラド ( rad ) が吸収線量の単位として用いられた。
1 Gal = 100 rad である。
下の表にはミリレム millirem ( mrem, 10-3 rem ) を用いて,一の単位に統一して表わした。
放射線が当たる皮膚では非常に高い線量 ( 数千 mrem ) だが,骨髄は放射線に対し非常に感受性が高い ( たとえば,白血病 ) 。
右のグラフは様々な放射線源から放射された推定年間線量を示す。個人の被爆量のうち,とくにラドンと医療機関での平均被爆量にはかなりの変動がある。さらに,肺だけがラドン線量に露出される ( ラドンによって放射されたα 線は他の組織に浸透できないので ) 。 ( 全国放射能防護測定委員会, Bethesda, MD. )
バックグラウンド放射線
我々の年間被爆量のうち約 27% がバックグラウンド放射線によるものである。
- 宇宙(放射)線 ( 27 mrem ) – 標高に伴って高くなる。したがって,デンバーの住民に対する線量は約 50 mrem である。
- 岩石と土壌 ( 28 mrem ) – その地域の地質のよって値が変動する。たとえば,ルイジアナに住む人は 15 mrem/年間 程度であるが,コロラド高原 ( デンバーを含む )では 140 mrem/年間 となる。
- 体内からの被爆 ( 40 mrem ) – このほとんどはカリウム-40 から生じる。自然のカリウムの約 0.02% は放射性同位元素 40K の形で存在する。 生体の組織は放射性か非放射性か区別できないので,0.02% ( すなわち,体重が 70 kg の人だと約 2.7 g ) が放射性ということになる。
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February 07, 2020