Others.html

生殖機能に関連するその他のホルモン


このページの内容

胎盤性性腺刺激ホルモン placental gonadotropin

胎盤から性腺刺激作用または乳腺刺激作用をもつタンパク質ホルモンが分泌される。
前者は妊娠の維持に,後者は妊娠中の乳腺の発育に関わりをもつと考えられている。

 

1. 絨毛性性腺刺激ホルモン chorionic gonadotropin

霊長類の胎盤の絨毛組織 ( 主に母体側栄養芽層, syncytitrophoblast ) で下垂体性ゴナドトロピンと類似の作用を持つホルモンが生産され,ヒトのものは hCG ( human CG )と一般に略される。

hCG は,ヒトにおいて妊娠10日目以降に血中や尿中に検出され,60-90日にピークとなり,その後減少するが分娩まで維持される。

hCG は,アミノ酸 237 個からなる,分子量 37,300 の二量体(α,βの二つのサブユニットで構成される)の糖タンパク質ホルモンである。

このホルモンは,ヒト黄体を刺激する作用が強いので,プロジェステロン分泌を通じて妊娠の維持に重要な役割を演じていると考えられている。

一般に,hCG は LH とほぼ同様の生理的作用を有する。精巣の間細胞における受容体は,LH と hCG とで共通のようである。

hCG は尿中に大量に排出されるので,最も容易に大量に精製できるゴナドトロピンであり,後述の PMSG とともにウシの多排卵誘起のために用いられる場合がある。

 

2. 妊馬血清性性腺刺激ホルモン pregnant mare serum gonadotropin, PMSG

妊馬血中に,妊娠40日頃から出現し,60~80日に最高値に達した後徐々に減少し,妊娠120 日頃には血中より消失する。

PMSG は分子量 70,000 の糖タンパク質であり,分子量が大きいため尿中には出現しない。 他の糖タンパクホルモン同様α,βのサブユニットからなる。

PMSG は妊娠子宮内膜へ侵入し子宮内膜細胞を侵食した絨毛細胞より分泌される。この絨毛細胞は,子宮内膜の基底層を突き抜け 子宮内膜杯 endometrial cup といわれる組織を作る。

PMSG は,ウマにおいては LH 作用のみであるが,それ以外の家畜では強い FSH 活性と弱い LH 活性を持つ。FSH 活性によって多くの卵胞を発育させるので,hCG と組み合わせて多排卵誘起に用いられる。

上述の hCG にならい eCG (equine chorionic gonadotropin) と呼ぶこともある。

 

3. 胎盤ラクトジェン placental lactogen, PL

霊長類やげっ歯類,反芻類等の胎盤は,生物学的作用が下垂体の PRL とよく似た物質を作り分泌している。
PL のうち hPL についてよく知られている。

hPL は 191個のアミノ酸からなる分子量約 22,000 のタンパク質でありヒト成長ホルモンとその分子構造が似ている。
胎盤の栄養細胞層で生産される。

PL は,乳腺を発育させ,乳汁分泌を開始させる。また,PL はラットやマウスの黄体を刺激する作用を持つ。


その他のホルモン

 

1. インヒビン inhibin

FSHの分泌を特異的に抑制する物質である。

α サブユニット ( 134 個のアミノ酸 ) と βA ( 116 個のアミノ酸 ) ,または βB サブユニット ( 115 個のアミノ酸 ) がジスルフィド結合した二量体の蛋白質である。

したがって,αβA と αβB の 2 種類が存在し,前者をインヒビン A ,後者をインヒビン B という。

主に卵巣の 顆粒層細胞 と精巣の セルトリ細胞 で生産されるが,FSH の刺激によってインヒビンの生産が高まると,そのインヒビンによって下垂体からの FSH の分泌が抑制されるというフィードバック機構が働く。

この調節機構によって動物種固有の排卵数が決定されると考えられている。


 

2. アクチビン activin

アクチビンは FSH 分泌の促進物質として性腺から最初に分離された ( 下垂体からの FSH 分泌を促進することからアクチビンと命名された ) 。

FSH 分泌の抑制物質であるインヒビンの β サブユニットである βA と βB がそれぞれジスルフィド結合した二量体の蛋白質である。

β サブユニットの結合には βAβA,βAβB,βBβB の3つのタイプがあり,それぞれアクチビン A ,AB ,B と呼ばれている。

アクチビンはインヒビンと異なり性腺以外にも存在し,細胞増殖因子として生体の調節に関与している。

卵巣で生産されるアクチビンは,卵巣の機能を促進する作用を持つ。なかでも顆粒層細胞の FSH の受容体を増加させ,FSH の卵胞発育作用を促進するとともに,黄体細胞からのプロジェステロン分泌を促す。


 

3. フォリスタチン follistatin

フォリスタチンはインヒビンとアクチビンの分離中に初めてブタ卵胞液中から得られた単一のポリペプチドであり,288 – 315 個のアミノ酸からなる。

フォリスタチンはアクチビン結合蛋白質であり,結合するとアクチビンの活性を抑制する。

性腺からのアクチビンとフォリスタチンは下垂体に対してフィードバック ( ロングループ・フィードバック ) 機構により,FSH 分泌を調整していると考えられる。

アクチビンと同様に生体内に広く存在しており,各組織におけるこれらのホルモンの役割はよくわかっていないが,脊椎動物の胚発育にアクチビンとフォリスタチンが関与していることが示唆されている。


 

4. 顆粒層細胞黄体化阻止因子

単層培養された顆粒層細胞とLHとの結合を阻害し,黄体化を阻止する。

ブタの小卵胞液中に存在するが,大卵胞には見られない。


 

5. ミューラー管抑制ホルモン Mullerian inhibiting hormone ( MIH )

雄では胎生期にウォルフ管 ( 中腎管 ) から精巣上体,精管,精嚢腺が発生し,他方,ミューラー管 ( 中腎旁管 ) は退行する。ミューラー管を退行させる物質が,胎子精巣セルトリ細胞で生産される。

 

性分化におけるMIHの役割についてはこちら

プロスタグランジン

 

6. プロスタグランジンprostaglandin ( PG )

プロスタグランジンは,五員環構造をもつ炭素 20 の不飽和脂肪酸 – プロスタン酸を骨格とする一群の化合物をいう。

ここでは,PGF2a と PGE2 について述べる。

 

黄体に対する作用

PGF2a は反芻家畜,ウマ,ブタ,モルモット,ラットなどで,プロジェステロン分泌を低下させ,黄体退行 luteolysis を起こす。

この作用は,黄体細胞の黄体刺激因子 ( とくに LH ) に対する受容体数を PGF2a が減少させることによって起こると考えられている。

PGF2a が子宮で生産される生理的な 黄体退行因子 luteolysin である。

繁殖技術の一つである PGF2a 投与による 発情同期化 は,PGF2a のこの強力な黄体退行作用を利用したものである。

 

卵胞に対する作用

プロスタグランジンの黄体退行作用卵胞では PGF2a と PGE2 が LH によって増加する。また,インドメサシンなどの PG 合成阻害剤は卵胞破裂を抑制する(すなわち,排卵が起こらない)。

これらのことは,PG が LH の排卵誘起作用に関与することを示唆する。

PG は卵胞壁細胞からコラゲナーゼを放出させ,それによって卵胞破裂を促すものと推測されている。

 

子宮に対する作用

PGF2a は子宮平滑筋を強く収縮させる。

したがって,子宮内膜で生産された PGF2a が陣痛の発来やヒト経血の排出に生理的意義をもつことを示す。

家畜において,PGF2a は分娩誘起の目的に利用される。

また,精液中に多量に含まれるPGF2a は,交尾した雌の子宮運動を促進し,精子の雌性生殖道の上走を助けるものと考えられている。


最初に戻る

メニューのページへ戻る

February 06, 2020

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です