DNA 塩基配列決定
DNA 塩基配列決定 ( DNA シーケンス ) は DNA 試料の ヌクレオチド の正確な配列を決定することである。
最も一般的な方法はディデオキシ法 dideoxy method と呼ばれる。
DNA は 4 つの デオキシヌクレオチド 3 リン酸 deoxynucleotide triphosphate から合成される。 右図上段の構造式は,それらのうちの 1 つデオキシチミジン 3 リン酸 deoxythymidine triphosphate ( dTTP ) を示す。それぞれの新しいヌクレオチドが,直前に追加されたヌクレオチドの 3′ OH 基に追加される。
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ディデオキシ法は 3′ 炭素原子( 赤矢印 )の OH を欠く 合成 ヌクレオチドが主に働く方法であることから,この名前が付けられている。ディデオキシヌクレオチド( ディデオキシチミジン 3 リン酸 – ddTTP – がここに 1 個示されている )が 伸張中の DNA 鎖に結合できる。しかしその時には,DNA 鎖の伸張が 停止 してしまう。つまり,次のヌクレオチドが結合するための 3′ OH がないためである。このため,ディデオキシ法は “DNA 鎖伸張停止法” chain termination method とも呼ばれる。
右図の一番下の構造式は,アジドチミジン ( AZT ) の構造を示す。この薬はかつては AIDS の治療に使用された。 AZT( ジドブジンとも呼ばれる )は,細胞によって取り込まれ,そこで 3 リン酸に変換される。ヒト免疫不全ウィルス ( HIV ) の 逆転写酵素 は通常のヌクレオチド ( dTTP ) より AZT 3 リン酸を好む。 AZT が 3′-OH 基をもたないので, AZT 3 リン酸が伸張している DNA 鎖に組み入れられた時に,逆転写酵素による DNA の合成が停止する。幸い,宿主細胞の DNA ポリメラーゼは dTTP を好むので,薬の副作用は予測されたほどひどくはない。 |
方法
塩基配列を決定しようとする DNA を一本鎖に調整する。
このテンプレート DNA に以下のものを添加する:
- 十分な量の 4 種すべての 正常な ( デオキシ ) ヌクレオチド混合液:
- dATP
- dGTP
- dCTP
- dTTP
- 限られた量の 4 種すべての ディデオキシ ヌクレオチド混合液,それぞれには異なる蛍光色素で標識しておく:
- ddATP
- ddGTP
- ddCTP
- ddTTP
- DNA ポリメラーゼ I
4 種の正常のヌクレオチドがすべて存在するので,偶然,DNA ポリメラーゼが正常のヌクレオチド( 垂線で示している )の代わりに ディデオキシ ヌクレオチド( 色文字で示している )を挿入するまで,DNA 鎖の伸張が進む。ディデオキシヌクレオチドに対する正常ヌクレオチド比が十分に高いと,いろいろな長さの DNA 鎖が形成される。
インキュベート終了後に,DNA 断片を長いものから短いものへ分離する。分解能が非常によいので,1 個のヌクレオチドの違いも十分に判定できる。レーザー光線を照射すると, 4 種のディデオキシヌクレオチドのそれぞれが異なる蛍光色素を示すので,その塩基配列が自動的に記録される。
DNA シーケンサーによる 分析例( 大腸菌 lysU 遺伝子,455 個のヌクレオチド )はこちら |
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February 05, 2020