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動物組織


Kimball
6 May 2019 版を翻訳一部改変

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1 個の受精卵が新生児に発生するには,平均 41 回の 有糸分裂 mitosis ( 241 = 2.2 x 1012 ) が起こる。この間,有糸分裂によって作られた細胞はいろいろな経路に分化 differentiation する。あるものは血液細胞に,またあるものは筋細胞に,などのようにである。

脊椎動物では,分化して,明らかに形態が区別できる細胞は 100 種類以上にも上る。それらの有機的な細胞集団を 組織 tissue といい,組織が一定の秩序をもって結合して 器官 organ を形成する。いろいろな器官が集まって,統御された種々の 機能系 system,たとえば消化器系や排出系などが形成される。

分化した細胞型の実際の数は間違いなく100 種をはるかに超える。

 

  • たとえば,すべてのリンパ球は似たもの同士であるが,実際は多種多様な機能を持つ細胞集団である。たとえば,いろいろな B 細胞や T 細胞など。
  • 中枢神経系のニューロンは 1,000 を超える機能をもつ細胞型があると考えられるが,それぞれ特異的な分化の経路を経た結果である。

 

下の図は,動物細胞の主要な型を示したものである。図の左側のリンクは,それぞれの説明が読めるようになっている。

動物組織

動物組織

 

1. 上皮組織 epithelial tissue

上皮細胞は平らなシート状に配列した細胞がぎっしり敷き詰められてできた組織である。上皮は皮表(体表面)を形作り,体腔(心膜腔、胸膜腔、腹膜腔など),管腔(消化管、呼吸器、泌尿器、生殖器など)の内側を被い,そして内臓器官の表面を被う。

上皮組織の発生学的分類

  • 上皮は内外の環境を分け隔てる境界を形成する。
    •  口腔と鼻腔の内腔上皮と同様に,体表面の上皮(すなわち皮膚の表皮など)は外胚葉から発生する。
    •  消化管,肺,膀胱,外分泌腺,膣などの内腔上皮は内胚葉から発生する。これらの上皮細胞の先端面は”外部環境”,すなわち器官の内腔や外気に曝されている。
  • 中皮(mesothelium)これらは中胚葉から発生する。
    •  胸膜ー肺の表面をおおう肺胸膜(pulmonary pleura or visceral pleura)と,胸壁の内面をおおう壁側胸膜(parietal pleura)がある。
    •  腹膜ー臓器表面の臓側腹膜(visceral peritoneum)と腹壁内面の壁側腹膜(parietal peritoneum)に区別される。
    •  心膜ー線維性心膜と漿膜 (しょうまく) 性心膜とから構成されている。
  • 内皮(endothelium)心臓,血管,リンパ管,関節腔,滑液嚢,くも膜下腔,内耳の外リンパ腔,前眼房など(これらの中腔には血液やリンパなどの液体が入っている)の内面を覆う単層扁平上皮を,とくに内皮といい,中胚葉とくに間葉から発生する。

すべての上皮の基底外側膜の表面は、内部の環境(細胞外液 extracellular fluid,ECF)にさらされている。 上皮細胞のシート全体は,基底膜と呼ばれている細胞外基質の層に付着している。基底膜は生物学的意味の「膜」でないので,基底層 basal lamina と呼んだ方が良いだろう。

上皮細胞の結合様式の詳細についてはこちら

上皮組織は,体表面,体腔,管腔などと細胞集団との境界に位置するという特徴から,以下の機能がある。

上皮組織の模式図
  • 体表面を被う上皮は,次の要因から下層の組織を保護している。
    • 物理的な損傷
    • 紫外線
    • 乾燥
    • 細菌の侵入
  • 腸の円柱状上皮組織は,
    • 腸内に消化酵素を分泌している。
    • 消化された食物から栄養素を吸収している。
  • 気道や肺にも上皮組織が配列し,乾燥してしまわないように,また吸入した塵粒を捕捉するするよう粘液を分泌している。上皮細胞のほとんどはその遊離面に繊毛をもち,取り込まれた異物を含む粘液を喉の方へ排出している。

上皮組織の形態学的分類

皮組織の形態学的分類

[1層の細胞配列]
 1) 単層扁平上皮 Simple squamous epithelium
  2) 単層立方上皮 Simple cuboidal epithelium
 3) 単層円柱上皮 Simple columnar epithelium
 4) 多列上皮 Pseudostratified epithelium
[複数層の細胞配列]
  5) 重層扁平上皮 Stratified squamous (flattened) epithelium
  6) 重層立方上皮・重層円柱上皮 Stratified cuboid (or columnar) epithelium
 7) 移行上皮 Transitional epithelium

2. 筋組織 muscular tissue

脊椎動物には 3 種類の筋組織がある:

  • 骨格筋 skeletal muscle は細長い筋繊維から成り,その収縮により骨格を運動させ得る。横紋を有すること( 横紋筋 ),自由意志によって収縮と緊張を起こしうることが特色である( 随意筋とも呼ばれる )。
  • 平滑筋 smooth muscle は内臓筋のほとんど,たとえば胃や腸,尿管,膀胱,子宮,血管などの壁の筋層を構成する。これらの筋層の平滑筋が収縮したり弛緩したりすることによって内容物の輸送や排出が行われる。心筋や平滑筋の運動は意志によって調節できないのでこれらの筋を不随意筋とよぶ。
  • 心臓の壁( 筋層 )をつくっている筋肉を 心筋 cardiac muscle という。

3. 結合組織 connective tissue

結合組織の細胞は多量の細胞外基質に組み込まれている。細胞外基質は細胞によって分泌される。結合組織はタンパク質と多糖類が結合した物質( プロテオグリカン proteoglycan )に埋まり込んだタンパク質繊維から成る。

支持結合組織 supporting connective tissue

脊椎動物の骨格の構成要素,およびその組織。体の軟部の保護の役目ももつ。

http://nakashima-seitai.com/column/?p=1007 より引用
  • 軟骨 cartilage -軟骨は,ある程度の硬さと弾力性をもつと同時に,骨と違って内部からの膨張によって成長できる。
    関節面( 硝子(しょうし)軟骨 ),耳介( 弾性軟骨 ),椎間円板( 繊維軟骨 )などに存在する。
  •  bone 骨の基質は 膠原繊維 と沈着した無機物から成る。主要な無機物はリン酸カルシウムであるが,リン酸マグネシウム,炭酸カルシウムやフッ化カルシウムも存在する。

密性(強靱)結合組織 dense connective tissue

線維性結合組織とも呼ばれている。

https://brain-gr.com/tokinaika_clinic/blog/health/why-is-it-easy-to-get-dementia-when-the-body-is-stiff/ より引用
  •  tendon – 筋肉が骨につく部分を形作る。平行に走る密な 膠原繊維 の束とその間に存する腱細胞 tendon cell から成る。腱は筋肉とは対照的に収縮性も伸展性もない。また,筋肉よりも通常その断面積が小さいから,筋肉の収縮力がこれによっていっそう強力に骨に伝わる。
  • 靭帯 ligament – 骨と骨とを結びつける役目をしている。靭帯は 膠原繊維 の束で,関節する 2 つの骨の間を結んでいて,関節包の外面に接している。靭帯には エラスチン というタンパク質が含まれており,靭帯に伸びに強い性質を与えている。

疎性結合組織 loose connective tissue

https://www.kin-maku.com/筋膜リリースとコラーゲン/ より引用

繊維性結合組織は体のあらゆる部分の間を埋め,結合作用の役目を果たす。各器官の間,各組織の間,たとえば上皮組織と筋組織の間などの間を埋める。,細胞間質が豊富で,コラーゲンエラスチン やいろいろなタンパク質が認められる。

フェシア fascia は筋細胞に結合する繊維性結合組織であり,皮膚と皮下組織を結合している。

繊維芽細胞 fibroblasts は繊維成分の合成にあずかり,細胞外基質を分泌する。

脂肪組織 adipose tissue

 脂肪組織 は 「脂肪」で,哺乳動物では2種類存在する。

https://tsunepi.hatenablog.com/entry/2015/05/04/210000 より引用
  •  白色脂肪組織 white adipose tissue (WAT)
    脂肪細胞 adipocytes が集まり, 脂質や糖分を体にためこみ活動のエネルギー源となる。それらを活動のためのエネルギー源(中性脂肪)として体にためこむ働きをもっている。細胞内には大きな単一の脂肪滴(単房性脂肪滴)を含んでいる。 一般に体脂肪、内臓脂肪などと呼ばれる。
  • 褐色脂肪組織 brown adipose tissue (BAT)
    褐色脂肪は、肩甲骨付近や腎周囲などの特定部位に少量だけ存在しており,細胞内には小さな複数の脂肪滴(多房性脂肪滴)を含み,脂肪を燃焼させて熱を生み出す働きをしている。ミトコンドリアも多く含まれる。
    褐色脂肪細胞によって熱の産生が活発になるのは,交感神経系が亢進されているときと考えられている。

白色脂肪は余剰なエネルギーを中性脂肪として蓄え,必要に応じて脂肪酸として全身に供給するエネルギーの貯蔵庫としての役割を持つ。一方で,褐色脂肪は脂肪を燃焼して熱を産生する特殊な脂肪組織である。

4. 神経組織 nerve tissue

https://blog.goo.ne.jp/kfukuda_ginzaclinic/e/3600423774bdfbabff599c197bebf8af より引用

神経組織が構成するものとして,中枢神経末梢神経がある。中枢神経は,脳と脊髄で構成されている。末梢神経は,脳や脊髄からそれぞれの身体の部位にのびている。

神経組織における中心的な存在は,神経細胞ニューロン neuron )である。神経細胞は,自身から遠く離れた位置まで突起をのばしている。その突起で,他の神経細胞から伝わった興奮を受け,その興奮を遠く離れた位置へと伝える。

神経細胞のはたらきの補助を行うものとして,神経組織内には支持細胞が存在する。

中枢神経における支持細胞は神経膠細胞(グリア細胞)であり,いくつかの種類が存在する。末梢神経における支持細胞には,シュワン細胞などがある。

神経細胞ニューロン

神経組織は ニューロン neuron と呼ばれる神経細胞から成る。ニューロンはその細胞膜の性質の変化によってスパイク( 活動電位 )を伝導し,さらに別のニューロンに伝達する。伝導されていくスパイクのことを 神経インパルス nerve impulse という。ニューロンには 3 つの部分が区別される。

  • 核を取り囲む細胞体
  • 興奮を細胞体の方へ伝える 樹状突起 dendritesa
  • 興奮を細胞体から送り出す 1 本の 軸索 axon( ただし,分枝は多い )

軸索の末端( 軸索終末 axon terminal )では,次のニューロンに興奮の伝達が行われる。

ニューロンの詳細についてはこちら

軸索の先端は以下の部分に会合する。

  • ニューロン間の興奮伝達が行われる部位を シナプス synapse という。
  • 筋細胞( 神経筋接合部と呼ばれる )
  • 腺細胞
    筋細胞や腺細胞が効果器として伝達情報に応じて生体の反応の発現に直接かかわる。

神経膠細胞(グリア細胞)

https://ameblo.jp/shiropochanpopopo/entry-12431069008.html より引用

グリア細胞のgliaはニューロンとニューロンの間の空間を埋める糊やセメントのような物質という意味のギリシャ語に由来する。 神経細胞に対し,以下のような種々の役割を担っている。

  • シュワン細胞(鞘細胞)
    末梢神経系に存在するグリア細胞で,軸索に巻きついて髄鞘(ミエリン)を形成する。髄鞘を持つ神経細胞を特に有髄神経と呼ぶが,一つの有髄神経細胞にはたくさんのシュワン細胞が通常巻きつくのに対し,複数の神経細胞にまたがって巻きつくシュワン細胞は存在しない。
  • オリゴデンドロサイト
    中枢神経系に存在するグリア細胞で,軸索に巻きついて髄鞘を形成および巻きついた神経細胞の維持と栄養補給の機能を持つ。ひとつのオリゴデンドロサイトは数本の突起を伸ばし,それぞれの突起が異なる神経細胞の髄鞘となることが知られている。
  • アストロサイト(星状膠細胞)
    「星のような」細胞で,シナプスとランヴィエの絞輪(node of Ranvier)のまわりに集まって,以下のようないろいろな機能を果たしている。
    • ニューロンの活動を調整する。
    • 脳脊髄液 cerebrospinal fluid (CSF) の循環,これにより情報伝達分子と同様にブドウ糖や乳酸などの必要物質を運搬される。
    • ニューロンによって産生されたアミロイドなどの老廃物をCSFの流れに乗せて除去する。
    • 脳の特定領域への血流を調整する。陽電子放射断層撮影(PET)や機能的な磁気共鳴映像法(fMRI)によって脳画像が得られ,測定されているのは,主に星状細胞の代謝活動である。
    • 活性が落ちたシナプスを(食作用によって)取り除く。

さらに,中枢神経系は多くの小膠細胞(ミクログリア,microglia)を含んでおり,(例えば,感染症が原因の)傷害に反応して,マクロファージ様に作用して,

  • 細胞残屑をのみ込んだり
  • 腫瘍壊死因子(TNF-α)とインターロイキン-1(IL-1)のような炎症性のサイトカインを分泌したりする。

ミクログリアは健康な脳で活性化し,少なくとも若いマウスでは,アストロサイトのようにシナプスをのみ込んで,発育過程の脳でシナプスの再編に積極的に関与しているようである。

ミクログリアは中枢神経系で食作用を示し免疫のほか異常代謝物などの回収を担う細胞である。

5. 血液

http://www.akira3132.info/blood_circulate.html より引用

骨髄がすべての血球の生産の場である。 血球は以下のように区別される。

  • 赤血球 red blood cell ( erythrocyte )
  • 5 種類の白血球 white blood cell ( leukocyte )
  • 血小板 platelet or thrombocytes
血球の機能についてはこちら

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March 18, 2020

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