視床下部のホルモン
間脳で産生され,脳下垂体門脈と呼ばれる血管を通って脳下垂体前葉に運ばれて,脳下垂体前葉ホルモンの分泌調節にあずかるペプチドホルモンの総称。
主な視床下部ホルモンを以下にまとめる。
- 甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン thyrotropin-releasing hormone ( TRH )
- ゴナドトロピン放出ホルモン gonadotropin-releasing hormone ( GnRH )
- 成長ホルモン放出ホルモン growth hormone-releasing hormone( GHRH )
- 副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン corticotropin-releasing hormone ( CRH )
- ソマトスタチン somatostatin
- ドーパミン dopamine
脳下垂体後葉ホルモンであるバソプレシンvasopressin(抗利尿ホルモン,ADH)とオキシトシンoxytocinも視床下部で産生されるので,広義には視床下部ホルモンに含まれる。
これら2種類のホルモンは,視床下部にある視索上核や室旁核の神経細胞で産生され,下垂体後葉にまでのびた神経突起の中を下降して貯留されている。そして,刺激に応じて下垂体後葉から血中に放出される。
内分泌腺の模式図はこちら |
視床下部と下垂体の位置を示す模式図はこちら |
甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン
Thyrotropin-releasing hormone ( TRH )
TRH はトリペプチド ( Glu His Pro ) である。
下垂体の前葉に達すると,以下のホルモンの放出を引き起こす。
ゴナドトロピン放出ホルモン
Gonadotropin-releasing hormone ( GnRH )
LH‐RH LH‐releasing hormone 黄体形成ホルモン放出ホルモンともいう。
1971年,シャリーらにより50万個のブタ視床下部から分離同定された10個のアミノ酸からなるホルモンである。
pGlu-His-Trp-Ser-Tyr-Gly-Leu-Arg-Pro-Gly-NH2
GnRH は LH(黄体形成ホルモン)と FSH(卵胞刺激ホルモン)の分泌を同時に促進する。
主な効果 | 副次的効果 |
---|---|
FSH と LH 分泌促進 | 雌( 女性 )においてエストロジェンとプロジェステロン 分泌促進 |
雄( 男性 )においてテストステロン 分泌促進 |
成長ホルモン放出ホルモン
Growth hormone-releasing hormone ( GHRH )
GHRH には 2 種類のペプチドが存在する。1つは 40 個のアミノ酸,他の 1 つは 44 個のアミノ酸を含む。
GHRH は下垂体前葉の細胞に作用し,成長ホルモン growth hormone ( GH ) の分泌を刺激する。
副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン
Corticotropin-releasing hormone ( CRH )
CRH は 41 個のアミノ酸からなるペプチドである。
CRH は下垂体前葉の細胞に作用し,副腎皮質刺激ホルモン adrenocorticotropic hormone ( ACTH ) の分泌を刺激する。
CRH は胎盤によっても合成され,分娩開始時期の決定に関与しているようである。 | 作用機序についてはこちら |
CRHは母体のT細胞が胎児に対して免疫的に攻撃しないように働いている。 | 免疫抑制についてはこちら |
ソマトスタチン Somatostatin
ソマトスタチンには 2 種類のペプチドが存在する。 1 つは 14 個のアミノ酸から成り,他の 1 つはより大分子で 28 個のアミノ酸から成る。
ソマトスタチンは下垂体前葉に作用して,
ドーパミン dopamine
ドーパミンはアミノ酸の 1 つ チロシン tyrosine の誘導体である。 視床下部における,その主な機能は下垂体前葉ホルモンである プロラクチン prolactin の分泌を抑制する。
オキシトシンとバゾプレッシン
oxytocin and antidiuretic hormone ( ADH )
これらのペプチドは下垂体後葉から分泌されるので,「 下垂体のホルモン 」の項に記載する。
オキシトシン |
バゾプレッシン |
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February 06, 2020