まだらの染色体
この写真は 440 倍で撮影されたヒト染色体の顕微鏡写真であるが,それぞれの染色体が 1 本の DNA 分子から出来ていることが信じられますか? 我々の染色体の中には真っ直ぐ伸ばせば 5 cm にもなるものがあります。
この写真は,
- 各染色体は DNA の単一分子を含む。
- 染色体の複製は半分を保存し,半分を複製する仕組みである ( DNA の複製 を参照 ) 。すなわち,一方の DNA 鎖はそのままの状態で,相補的 DNA 鎖を組み立てる時のテンプレート ( 鋳型 ) として用いられる。
培養中の細胞を ピリミジン塩基 類縁物質である, ブロモデオキシウリジン bromodeoxyuridine ( BrdU ) で処理すると,S 期 に細胞はチミジンの代わりにこの物質を DNA 分子の複製の時に取り込んでしまう。
出来上がった DNA は,正常な染色性が得られない。
BrdU で 1 度処理された染色体の複製が進むようにすると,次の分裂中期に認められる染色体は正常に染色される。
しかし,細胞が BrdU で 2 度処理された染色体を複製する時, 姉妹染色体 の一方は次の分裂中期に正常に染色されるが,その対の姉妹染色体は染色されない。
右図にあるように,一方は染色され,他方は染色されない ( 赤の円形 ) 。
染色体が異なる DNA 分子から出来ているとしたら染色される部分とされない部分の斑のパターンが見られるはずである ( 例外 赤矢印 については以下で説明する ) 。
例外
時々,姉妹染色体が自然に部分交換をしてしまう。この交換は相互に起こる。
染色体の乗り換えについてはこちら |
特定の化学物質で処理すると,この交換の頻度が増大する。右の図では,DNA の切断を起こす試薬で処理したため,BrdU で処理された染色体はさらに多数の交換部位を示している。この切断の 修復 によって姉妹染色体間に相互の交換が起こった。
したがって,図にあるような染色部位と非染色部位が交互に並んだまだらのパターンとなる。
これらの交換が自然に起こったとしても,各遺伝子が正確に複製されているためにたいてい遺伝的な変化はない。つまり,同じ遺伝子をもつ,相同の部分が交換しているだけである。
下の写真は正常男性の核型である。
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February 06, 2020