BCL-2
BCL-2 は第 18 染色体上にある ヒトの原ガン遺伝子 proto-oncogene である。
この遺伝子の産物は,小胞体の膜,核膜ならびに ミトコンドリアの外膜 に組み込まれた 膜内在性タンパク質 ( Bcl-2 と呼ばれる) である。
この遺伝子は B 細胞白血病 B–cell leukemia の転座した遺伝子として発見された( したがって,この名称が使われている )。 B 細胞リンパ腫でもこの転座が認められている。
ガン性 B 細胞 では, BCL-2 遺伝子座を含む第 18 染色体の一部が,抗体重鎖遺伝子座を含む第 14 染色体の一部と相互 転座 している。この t ( 14;18 ) 転座によって,重鎖遺伝子の エンハンサー の近くに BCL-2 遺伝子が位置してしまう。
このエンハンサーは B 細胞内で非常に活動的である( B 細胞の役割は多量の抗体を合成することである )。したがって, Bcl-2 タンパク質がこれらの t ( 14;18 ) 転座細胞において高レベルで発現したとしても当然なのである。
なぜ BCL-2 が原ガン遺伝子となるのか?
すべての活性化された リンパ球 と同じように,B 細胞は役目を果たした 2 – 3 日後には死ぬ。 これは役目を果たした後はいつまでも残って,自身の組織に攻撃することのないようにするためである。これらの B 細胞は アポトーシス によって自殺する。
しかし,高いレベルの Bcl-2 タンパク質があると,細胞をアポトーシスによる早期死から防御する。 Bcl-2 タンパク質はアポトーシスに必要なカスパーゼの活性化を抑制することによってアポトーシスを抑止してしまう。 [ 詳細についてはこちら ]
この様なことが起こるので,アポトーシスの抑制物質をコード化する遺伝子に対して,ガン遺伝子と同様に注意していかなければならない。この場合,その影響は細胞の増殖速度が増大することではなく,細胞死の速度が低下してしまうことで現れる。
抗体遺伝子座は原ガン遺伝子が位置する領域としては危険な部位である。抗体重鎖遺伝子のエンハンサー付近への原ガン遺伝子 c-myc の転座によって, バーキットリンパ腫 となるガン性 B 細胞が生じる。
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February 05, 2020