ステロイド・ホルモン受容体
ステロイド・ホルモン受容体は特定のステロイド分子の結合部位をもっているタンパク質である。ステロイドがその受容体と複合体を形成すると,今度は特定の DNA 塩基配列から成るそれらのリスポンス・エレメント ( 反応要素 ) に結合できる。
リスポンス・エレメントは遺伝子の プロモーター の一部である。受容体が結合すると,場合によって,プロモーターによって制御された遺伝子を活性化したり,抑制したりする。
ステロイド・ホルモン が遺伝子のスイッチを入れたり,切ったりするのはこの機構によっているのである。
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右のイメージは,グルココルチコイドのレスポンス・エレメント ( 各パネルの左側に黄色で示された二重らせんが DNA である ) にグルココルチコイド受容体 ( 各パネルの右側のタンパク質ホモ二量体 【 2 つの同一タンパク質の複合体 】)が結合している状態を示す立体鏡像。
グルココルチコイドのレスポンス・エレメントの DNA 塩基配列は
5′ AGAACAnnnTGTTCT 3′
3′ TCTTGTnnnACAAGA 5′
ここで n は任意のヌクレオチドを示す ( 逆繰返し配列になっていることに注意 ) 。
グルココルチコイド受容体は,すべてのステロイド・ホルモン受容体のように,ジンク(Zn)フィンガー 転写調節因子 である。右図の 4 つの黄色の球体が亜鉛原子である。各々は 4 つのシステイン ( 濃い緑色で示している ) に結合している。
ステロイド・ホルモンが遺伝子転写を始めるには:
- そのホルモンがその受容体に結合する。
- ホルモン-受容体複合体が別の複合体 ( 2 セット目 ) と結合して,ホモ二量体 を形成する。
- 細胞質から核へ移動する。
- そのレスポンス・エレメントに結合する。
- 他の転写調節因子を活性化し,転写 を開始する。
これらの機能の各々は,タンパク質の特別の領域に依存する ( たとえば,DNA に結合するジンク(Zn)フィンガー ) 。その領域のどこか 1 つでも突然変異が起こると,受容体としての他の機能は影響を受けないが,遺伝子を活性化することができなくなる。
ホルモン結合の物的証拠
右図は放射性同位体で標識した プロジェステロン を投与 15 分後のモルモットの子宮内膜のオートラジオグラフ。 放射性同位体は,核のイメージに重ねた黒色顆粒で示されるように,子宮内膜細胞の核内に集中していた。放射性の エストロジェン が投与された場合も同じ結果が得られる。
子宮内膜細胞はプロジェステロンとエストロジェンの両方の標的細胞で,妊娠のための子宮の準備に働く。 [ 詳細についてはこちら ]
標的でない細胞 ( たとえば,肝細胞やリンパ球 ) には性ステロイド・ホルモンの蓄積はみられない。それらの DNA はリスポンス・エレメントを含むが,それらの細胞は,必要なタンパク質受容体をもっていないためである。
ステロイド・ホルモン受容体・スーパーファミリー
グルココルチコイドとプロゲステロンの受容体として働くジンクフィンガータンパク質は,以下の受容体として働く同様のタンパク質のファミリーの 1 つである:
- 他のステロイド・ホルモン:
- アルドステロン aldosterone ( 電解質コルチコイド )
- エストロジェン
- 甲状腺ホルモン, T3
- カルシトリオール calcitriol ( 活性型ビタミン D )
- ビタミン A の同族物質
すべての例で,受容体は少なくとも 3 つの機能要素または ドメイン から成る。 N-末端 から C-末端 まで,それらのドメインは:
- 受容体が ( 遺伝子の発現を制御している ) プロモーターを活性化するために必要なドメイン
- リスポンス・エレメントである DNA 結合に必要なジンクフィンガー・ドメイン
- ( 二量体の 2 番目のユニットと同様に ) 特定のホルモンにが結合できるドメイン
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February 07, 2020