ヒト胚性幹 ( ES ) 細胞の培養
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ヒト胚性幹 (ES) 細胞
ウィスコンシン大学の James Thomson の研究グループがヒト胚性幹 ( ES ) 細胞を樹立したことが, Science 1998 年 11 月 6 日号に報告された。
着床時の哺乳動物胚は 胚盤胞 blastocyst と呼ばれる。
これは,以下から構成される:
- 栄養膜 ( 外胚葉 ) trophoblast – 胚の外周を囲む細胞で,着床の時に子宮に接触し, 胚体外膜 に発達する:
- 胎盤
- 臍帯
- 羊膜
胚体外膜についてはこちら - 内細胞塊 inner cell mass ( ICM ) – 胎児に発達する。
内細胞塊の細胞は 多分化能 を有する。すなわち,それぞれが新生児を構成する多種多様の分化細胞型に発生可能である。これらは:
胚性幹細胞樹立の方法
- ヒト胚盤胞から栄養外胚葉細胞を取り除く。
- 内細胞塊の細胞を分離し,フィーダー細胞 ( 通常,マウスの繊維芽細胞が用いられる支持細胞 ) の上で培養する。
- 1 個の細胞を分離して,クローンとして発育させる。
- クローン細胞を検定する。
結果
- 細胞のクローン化がうまくいっていると,正常なヒトの核型が維持されている ( たとえば,HeLa 細胞 のようにガン化した細胞では核型が異常となる ) 。
- 各細胞は,高い テロメラーゼ 活性を示す。この酵素は,正常な染色体の長さを維持し,無限に細胞分裂できる細胞の特徴である。
- when injected into SCID マウス に投与した場合に,これらの細胞は 奇形種 teratoma を形成する。このガンはヒトの分化した細胞型が混合して見られる。以下の特徴を示す細胞が含まれる:
- 外胚葉
- 中胚葉 ならびに
- 内胚葉
SCID = severe combined immunodeficiency. このマウスは機能的な免疫システムを欠いている ( T 細胞 も B 細胞 ももたない )。したがって,組織の拒絶反応も示さない。 |
成人の分化した細胞から ES 細胞を作製する
Advanced Cell Technology 社 ( マサチューセッツ州 ) の研究者が 成人 のヒト細胞を胚性幹細胞の特性をもった培養細胞に,すなわち多能性細胞に変換できたと報告した。
彼らの方法は, ドリーを作出した 方法に極めて似ている。
- 成人から細胞を取り出す。頬の細胞と白血球が用いられた。
- ウシ卵母細胞を除核する。
- ヒト細胞を除核ウシ卵と電気細胞融合させる。
- 融合細胞を体外培養で発育させた。
この技術の最終目標
この方法は他の動物で ( ヒツジとマウス ) 用いられている。どちらの場合でも,再構築胚が宿主の子宮に移植され,完全な動物が生産された ( それぞれ クローンマウス と ドリーの作出 を参照 ) 。
この技術の最終目標は何であろうか?
ヒトの胚性幹細胞は,いろいろな可能性を持っている:
- ヒト胚の発生能について,たとえば遺伝的な制御などについて情報が得られる。
- 分化誘導ができる適正なシグナルが発見できれば,これらの細胞から,たとえばランゲルハンス島のインスリン分泌ベータ細胞などを形成させることができる。
- それらの細胞を患者 ( たとえば,インスリン依存性糖尿病 – IDDMの患者 ) の機能しなくなった細胞と置換することができる。
- あるいは,移植患者に欠如している遺伝子を発現させるのに必要な DNA で形質転換させることができる。
- 拒絶反応を低下させるための遺伝子改変ができる。
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February 06, 2020