ゴルジ装置
小胞体結合のリボソームで合成される分泌タンパクは膜流にしたがって化学的な修飾をうけながら複合体に達し,濃縮された分泌顆粒 ( かりゅう ) の形で細胞外に分泌される。 ゴルジ装置は小胞体 endoplasmic reticulum ( ER ) で合成されたタンパク質を専ら処理する細胞小器官である。
- 主な修飾能はグリコシル化 ( 糖鎖形成 ) glycosylation である: 糖分子を付加し 糖タンパク質 を形成する。
- これらのあるものは最終的に細胞膜に埋まり込む膜内在性タンパク質になる。
- ゴルジ装置を通過した他のタンパク質は リソソーム に最終的に到達する。
- あるいは エキソサイトーシス ( 吐細胞現象 ) exocytosis によって分泌される ( たとえば,消化酵素 ) 。
ゴルジ装置から離れたタンパク質の経路についてはこちら - 上皮細胞における分泌細胞などでは,タンパク質の量をはるかに超える炭水化物が付加され,ムコ多糖類 とよばれる。
- 植物細胞では,ゴルジ装置は 細胞板 ならびに細胞壁を分泌する。
- ホルモン や 神経伝達物質のような小さなペプチドは,リボソームで直接合成されるのではなく,ER 上のリボソームが大きな前駆体を合成し,その後ゴルジ装置に運ばれて小断片に分断される。例: プロオピオメラノコルチン – 265 個のアミノ酸からなるが,以下のポリペプチドに分断される。
ゴルジ装置は,細胞表面と小胞体の間に位置する細胞内膜系の複合体である。
多数の酵素がゴルジ装置にあり,種々の合成活動に携わっている。したがって,
- 処理されたタンパク質を整理し,それぞれの目的部位へ輸送し,かつ
- 再利用するために,処理用タンパク質 ( たとえば,グリコシラーゼなど ) を回収する機構をもつ。
すべての機構についてはまだ分かっていないが,いくつかの証拠が得られている。
出て行く経路
- 小胞体表面から千切れてできた “遷移小胞” transition vesicle には,以下のものが含まれる:
- 膜内在性蛋白
- 処理される予定の水溶性タンパク質
- 処理用の酵素
- 遷移小胞が千切れる時には,COPII ( Coat Protein II ) で被覆される。
- 遷移小胞は 微小管 上を “cis Golgi” ( 右図参照:のゴルジ装置の膜複合体のうちER 側を指す ) 方向へ移動する。
- 場合によっては, COPII 被覆が除かれ,お互いに融合して大きな胞体を形成する。
- これらが “cis Golgi” と融合する。
- タンパク質に糖が付加されるが,非常に多数の連続的な糖鎖形成過程を経ることになり,そのそれぞれに特異的な酵素が必要となる。
- この過程は,タンパク質が “cis Golgi” → “medial Golgi” → “trans Golgi” の各区画へ連続して輸送されながら起こる。
- “trans Golgi” の外側面で小胞が千切れ, “修飾が完了した産物” がそれぞれの部位へ運ばれる。
入ってくる経路
膜複合体の一部が本来の部位から移動することによって,各処理に必要な酵素も本来の作用すべき部位から共に移動してしまう。
様々な信号を使用して,ゴルジ装置は “産物” からそれらをつくった処理酵素を分離し,小胞体へ送り戻す。
この輸送にも膜の千切れた小胞が利用されるが,送り返される小胞は COPI ( coat protein I ) で被覆される。
小胞はどのようにして正しい目的物を認識するのか?
この過程には,以下の 2 つがある:
- 特異的に結合するタンパク質ペアである SNARE によって,各小胞が正しい目的物が認識できる。
- 他のタンパク質, NSF と SNAP,これらが 2 つの膜の融合を仲介する。
各因子の説明 ( 右図と対応している ) :
- NSF,これは ATP のエネルギーを用いて膜融合を仲介する。
- SNAP = Soluble NSF Attachment Protein ( NSF が結合するタンパク質 )
- SNARE = Soluble NSF Attachment Protein Receptor ( その SNAP の受容体 )
- v-SNARE = vesicle SNARE ( 小胞の SNARE )
- t-SNARE = target SNARE ( 標的の SNARE )
v-SNARES と t-SNARES はどちらも膜内在性タンパク質であり,それらの表面ドメインでお互いに 特異的 に結合する。
これらが結合すると:
- SNAP タンパク質は複合体に結合し,
- いくつかの NSF 分子の作用 ( 膜融合を仲介する ) を促す。
NSF と SNAP はすべての小胞体の融合を仲介する。小胞体と目的物の特異的な認識は SNARE が行っている。
ゴルジ装置の他の輸送機構は?
上述した小胞の折り返し輸送機構のほかに,ゴルジ自身の槽状膜が移動する証拠も得られている。すなわち,”cis Golgi” が移動しながら “medial Golgi” となり,さらに “trans Golgi” となって内容物を輸送するというものである ( この部分については,上段の図に赤矢印で表現されている ) 。
ゴルジ装置は静的な細胞小器官ではない
- ゴルジ装置は 有糸分裂の開始時に,散り散りになり見えなくなる。
- 有糸分裂の終期になると,ゴルジ装置が再び現れる。それがどのように起こっているのかは分かっていない。
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February 04, 2020