ホルモンの種類と作用
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ホルモンとは
分泌物を体腔や体外に導く管を備える 外分泌 exocrine ( 上図左 ) に対し,分泌物を直接血液や体液中に放出する場合を 内分泌 endocrine ( 上図右 ) と呼ぶ。
内分泌される物質は ホルモン hormone と総称される。
分泌細胞では小胞体とゴルジ装置がよく発達し,分泌物が顆粒や小滴となっていることが多い。
内分泌腺の模式図はこちら |
多細胞性にとって最も重要なことは,体を構築する様々な種類の細胞の統合である。細胞は化学の信号によって相互作用し合っている。
3 種類の化学信号伝達法がある:
- 自己分泌 ( オートクリン ) autocrine ( 右図a ) – 細胞は自ら合成した化学物質を用いて信号を発し,時に自ら反応する。自己分泌の信号伝達は,
- 単にその細胞の細胞質内で,または
- その細胞の表面の受容体と分泌された化学物質が反応して起こる。
- 傍分泌 ( パラクリン ) paracrine ( 右図b ) – 周辺領域に化学物質が拡散し,近隣の細胞受容体と反応する。たとえば,
- サイトカイン cytokine の分泌はその周辺に炎症反応を起こす。
- 神経系のシナプスにおける 神経伝達物質 neurotransmitter の分泌
- 内分泌 endocrine – 血中に化学物質が分泌され血液や組織液によって作用を及ぼすべく細胞まで運ばれる(下図「内分泌細胞と神経分泌細胞の作用」参照)。
ホルモンの分泌様式
ホルモンは
- 内分泌細胞 ( 右図a )
- 神経分泌細胞 neurosecretory cells ( 右図b )
- その他の細胞型 - 例) 成長ホルモン,ヒスタミン,プロスタグランジン
によって分泌される。
ホルモンは,一般的に血中に分泌され血液や組織液によって作用を及ぼすべく細胞まで運ばれる。
ホルモンの種類
哺乳動物にみられるホルモンの構造は,それらの化学的構造から次の 3 種類に分類される。
- ペプチドホルモン
アミノ酸がペプチド結合したもの。
- 単純ペプチドホルモン
- 糖蛋白ホルモン: 10 – 20%程度の糖 ( シアル酸,ヘキソース,ヘキソサミン等 ) を含む。
ホルモンの作用発現
1.ペプチドホルモン(タンパク質,ポリペプチドならびにアミノ酸)
これら大部分の親水性ホルモン分子が標的細胞の細胞膜受容体に結合する。
これによって,細胞の機能がホルモンに反応することができる。
これらの受容体は 膜貫通型のタンパク質 である。
ホルモンがその受容体に結合すると,一連の細胞内信号が開始して,以下のことが起こる:
- 細胞の特性が変化する ( たとえば細胞膜のチャンネルが開口・閉鎖など ) ,または
- 遺伝子の プロモーター や エンハンサー を作動 ( または停止 ) させることによって核内の遺伝子発現を刺激 ( または抑制 ) する。
- ホルモンが受容体の細胞外領域に結合する。
- 受容体は 膜貫通型のタンパク質 である。
- 多くの場合 ( すべてではない ) 細胞膜を 7 回通過しており,その アミノ末端 N-末端 が細胞の外側に露出し,カルボキシル末端 C-末端 が細胞質へ突き出た形をしている。
- ホルモンの受容体への結合によって:
- 細胞質内の C-末端に結合している G タンパク質 を活性化する。
- これによって,“第 2 メッセンジャー” の産生が開始される。その主要なものを次にあげる:
- サイクリック AMP ( cAMP )
これは,ATP から アデニール・シクラーゼ によって産生される。 - イノシトール 1,4,5-トリスフォスフェート inositol 1,4,5-trisphosphate ( IP3 )
- サイクリック AMP ( cAMP )
- 今度は,第 2 メッセンジャーが一連の細胞内変化を引き起こす。
主なものとしては:
- 酵素のリン酸化ならびに活性化
- 細胞内に蓄積された Ca2+ の放出
- cAMP の場合には,これらの酵素的な変化が転写調節因子 CREB ( cAMP response element binding protein ) を活性化する。
- 遺伝子のプロモーター領域の 反応要素 response element,すなわち
5′ TGACGTCA 3′
に結合して,活性化された CREB によって遺伝子 転写 が始まる。
- 細胞はホルモンの信号伝達に反応して,遺伝子産物を産生し始める。
右図に第2メッセンジャーとして サイクリックAMP が作用するホルモン作用発現の経路を示した。
図の番号に関する説明を下の表の番号に対応させて,解説している。
ペプチド・ホルモンの作用発現と第2メッセンジャーの働き |
1.内分泌細胞によって分泌されたホルモン(図中H)は血流によって標的細胞に運ばれる。2.ペプチド・ホルモンは標的細胞の受容体(R)に結合する。3.ホルモン受容体複合体は,細胞内にあるアデニル・シクラーゼを活性化する。 アデニル・シクラーゼはATPを第2メッセンジャーであるサイクリックAMPへ変換する。4.サイクリックAMPはタンパク質キナーゼを活性化する。5.それによって,特定のタンパク質がリン酸化される。6.標的細胞の活性に変化が生じる。 |
第2メッセンジャーとして IP3 が作用するホルモン作用発現経路については省略する。
2.ステロイドホルモン
以下にステロイドホルモンの作用機序を示す(右図:図の番号と対応して説明している)。
1.内分泌細胞で分泌されたステロイドホルモンは標的細胞に運ばれる。
2.ステロイドホルモンは分子量が小さく,脂溶性分子なので細胞膜を自由に通過できる。
3.ステロイドホルモンは細胞質を通過して核に到達する。
4.核内の受容体に結合して生じたステロイドホルモン-受容体複合体は,特異的なDNA配列と結合する。
5.その結果,特異的な遺伝子が活性化し,mRNAの転写がおこり,
6.特異的なタンパク質が合成される。これらのタンパク質はホルモンとしての反応を誘起する。
ホルモンの制御
血中を流れるホルモン量は,以下の機構によって厳密に制御されている:
- あるホルモン( 第 1 )が他のホルモン( 第 2 )の産生を刺激する場合に,第 2 のホルモンが第 1 のホルモンの生産を抑制することがある。例: 卵胞刺激ホルモン follicle stimulating hormone ( FSH ) が卵胞からのエストロジェンの放出を刺激する。エストロジェンの濃度が高くなると,今度は FSH のそれ以上の産生を抑制する。
- ホルモンの拮抗作用例: インスリンは血糖値 ( グルコース濃度 ) が上がった時に抑制するよう働く。グリコーゲンは血糖値が低下した時に,それを上昇させるよう働く。
- ホルモンによって低下 ( または上昇 ) した物質の働きによって,ホルモン分泌が増加 ( または減少 ) する。例: 血中の Ca2+ 濃度の上昇によって,副甲状腺ホルモン ( PTH ) の産生が抑制される。低濃度の Ca2+ によってこれが刺激される。
ホルモンの輸送
少数のホルモンは血中に溶解して循環するが,大部分のホルモンは 血漿タンパク質 と結合して血中を運ばれる。例えば,強い疎水性を示すステロイド・ホルモンは血漿タンパク質に結合して運搬される。
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February 06, 2020