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比内地鶏 産地ピンチ 需要低迷 来月から減産=秋田


2020.04.18

 新型コロナウイルスの影響で県特産の比内地鶏の需要が激減し、産地がピンチに陥っている。本場・大館市の生産団体は5月から飼育数の減少を図り、4割減産することを決定。生産者からは「見通しが立たない」との声ももれる。
 比内地鶏は独特のうま味と歯ごたえが特徴のブランド鶏で、県内の流通出荷数は年間51万5000羽(2019年)。うち首都圏など県外出荷が3分の2にあたる33万8000羽を占める。県によると、比内地鶏関連業界の売り上げは年間184億円に上る。

 しかし、新型コロナウイルスの影響による外出自粛や国の緊急事態宣言などを受け、飲食店での需要が低迷。約21万羽を出荷するJAあきた北比内地鶏生産部会(農家27戸)は今月10日、役員会で4割の減産を決めた。約1万羽を飼育する高橋浩司部会長(60)は「リーマン・ショック(2008年)の時は2割減産を2年ほど続けたが、今回は見通しが立たず厳しい状態だ」と訴える。今後は毎月の役員会で飼育数を決め、更なる減産も検討するという。
 ただ、比内地鶏はヒナから飼養して出荷するまで150日以上かかるため、すぐに出荷を減らすことや価格を下げることは難しい。

写真=飼育される比内地鶏(大館市比内町で)

 同JA管内の全ての比内地鶏を買い取る大館市比内町大葛の食肉処理販売会社「本家比内地鶏」は、通常の7倍を超える3万5000羽の在庫を抱える。同社は販売先の7割が関東地方の飲食店。阿部一茂社長(67)は「在庫で冷凍庫がパンクしそう。営業するにもできず、長引けば耐えられなくなる」と打ち明ける。
 同社は大手企業や事業所に対し、肉や加工品などを詰め合わせにした比内地鶏セットの特別販売を始めた。同JAも組合員にチラシで購入協力を呼びかけている。
 こうした現状をふまえ、県は県内の小中学校の給食などで提供することを決めた。県畜産振興課の畠山英男課長は「子供たちや高齢者など県内の方々に食べてもらい、消費拡大につなげたい。産地縮小や崩壊を招かないよう、力を合わせてしのぎたい」と話している。
 
 

《読売新聞 2020/04/18 より引用》