20201011

シマウマのしま模様 アブの吸血避けるため? 米英の科学誌に研究成果発表


2020.10.11

写真=シマウマのしま模様はアブに吸血されにくい可能性があるという(英ブリストル大学提供)

シマウマは、なぜしま模様なのか? まるで禅問答だが、チャールズ・ダーウィンの時代から数々の仮説があり、学術上の議論が続いている疑問でもある。

有名なのは「草原で天敵から身を守るカムフラージュになる」という説だ。ところがシマウマの最大の天敵とみられるライオンなどネコ科の肉食動物は、シマウマに近づかないとしま模様と認識できない、という実験結果がある。実際、シマウマの相当数が模様にかかわらずライオンに捕食されているとみられ、近年は否定的になっている。

暑いアフリカにすむので「熱を吸収する黒と反射する白の温度差で空気に対流ができ、体を冷やす」という説もある。しかし実際に測ると温度はさほど下がらず、説得力は今ひとつだ。

近年、有力とされるのが「アブの吸血を減らす」という仮説だ。それを補強する研究成果が、米英の科学誌で発表された。

アフリカの草原は吸血アブも多い。英ブリストル大などの研究チームが昨年2月、馬に白、黒、しま模様の布をかぶせ、寄ってくるアブの動きを分析した。するとしま模様の布に近づくアブはうまく減速できず、布にぶつかったり、進路をそらしたりする割合が高いことがわかったという。

「なるほど」と思わせる結果だが、研究チームはさらに実験を続けた。今度は灰色、縦じま、横じま、チェック模様をかぶせると、チェック模様でもアブの飛行の失敗率が高くなったという。研究チームは今年7月の論文で、こう続けた。

「アブを避けるなら、別にしま模様でなくてもよさそうだ。なぜシマウマがしま模様だけなのか、という疑問が湧く」

九州大の平松千尋准教授(視覚学)の話「他の仮説を完全に退ける実験ではないが、虫の行動を詳しく検証することで、一番有力とされた仮説の説得力がさらに増したと考えられる」

《読売新聞 2020/10/11 より引用》