性別決定たんぱく質 確認 マウスで阪大教授ら 性転換実験も成功
2020.11.13

◎サイエンスBOX
性別を決めるたんぱく質をマウスで発見したと、大阪大の立花誠教授(分子生物学)らが発表した。このたんぱく質を作る遺伝子を操作することで、逆の性に変える実験にも成功した。米科学誌サイエンスに論文が掲載された。
哺乳類はXとYの性染色体の組み合わせの違いで性別が異なり、XYならオス、XXならメスになる。マウスでは1990年、オスになることを決める遺伝子がY染色体に見つかった。しかし、この遺伝子から作られるたんぱく質「SRY」だけではメスからオスになりにくく、性別を決める唯一の要素とは言い切れない部分が残っていた。
チームはSRYを作る遺伝子やその周辺の遺伝子を詳しく調べ、SRYとは別のたんぱく質が作られていることを見つけ、「SRY—T」と名付けた。
オスになるXYの染色体を持つマウスの受精卵に遺伝子操作を施し、SRY—Tを作れないようにすると、卵巣を持つメスになって生まれた。反対に、メスになるXXの染色体を持つ受精卵でSRY—Tが作られるように操作すると、精巣を持つオスが生まれた。XXの受精卵でSRYを作らせた場合は、オスにはならなかった。
人間や他の哺乳類にSRY—Tを作る遺伝子があるかどうかは不明だという。立花教授らは、「マウスが進化を通じて、確実にオスに変化するために獲得した特異な仕組みではないか。他の哺乳類でも調べたい」と話している。
哺乳類を含む脊椎動物の性決定の仕組みに詳しい田中実・名古屋大教授(生殖生物学)の話「マウスで性別を決めるたんぱく質が見つかった意義は大きい。このたんぱく質を作る遺伝子をさらに調べられれば、動物に共通する性決定の仕組みの解明に貢献する可能性がある」
《読売新聞 2020/11/13 より引用》