20201115

鳥インフル 相次ぐ香川 県内5例目か


2020.11.15

 ◆野鳥飛来ため池 密度全国一/小動物媒介? 靴の交換怠る 

図=鳥インフルエンザの感染が確認された養鶏場

 香川県の養鶏場で鳥インフルエンザの感染が確認されてから15日で10日となる。感染は4例に広がり、殺処分した鶏は38万羽余り。14日には5例目の感染疑いも新たに判明した。感染の連鎖に、関係者の間では「終わりが見えない」と悲壮感が漂う。なぜ香川で感染が相次ぐのか。

 「どうして香川ばかりで」。4例目の感染が確認された13日、県幹部はぼう然とした表情でつぶやいた。

 三豊(みとよ)市の養鶏場で感染が確認された3日後の8日、同県東かがわ市で、11〜13日には三豊市の2か所で鳥インフルエンザウイルスが検出された。3例目までは毒性の強い高病原性のウイルスだと確認され、4例目は調査中だ。さらに14日、同市内で感染疑いのある鶏が見つかり、県が遺伝子検査を進めている。県は4例目までの計約38万4000羽の殺処分をすでに終えている。

 国内の養鶏場で鳥インフルエンザが発生したのは2018年1月以来。このときも同県さぬき市の養鶏場が舞台となった。

 鳥取大付属鳥由来人獣共通感染症疫学研究センターの山口剛士教授(動物衛生学)によると、今年はユーラシア大陸や朝鮮半島などで野鳥への感染が確認されているといい、渡り鳥が国内にウイルスを持ち込んだ可能性を指摘する。

 同県内で飼育されている肉用鶏と採卵鶏は計約760万羽。卵の生産量は全国13位、鶏肉の出荷数は15位と決して多くはない。一方で、野鳥が集まりやすい農業用ため池は約1万4600か所あり、全国3位。面積あたりの密度は同1位だ。山口教授は「ため池に飛来した渡り鳥の間で感染が広まった恐れがある」と話す。

 ■対策不十分? 

写真=殺処分を進める香川県職員ら(13日、香川県三豊市で)=県提供

 拡大の背景として養鶏場の感染防止策が不十分だった可能性も指摘されている。

 農林水産省の現地調査では、ネズミなどの小動物の媒介も疑われている。1、2例目では鶏舎の金網に隙間があり、鶏舎内に小動物のふんがあった。従業員は鶏舎ごとに靴を交換しておらず、ウイルスが靴に付いたまま鶏舎に入った恐れがある。3例目でも金網に小型の野鳥が侵入した形跡や、壁などに隙間が見つかった。

 家畜伝染病予防法に基づく基準では感染防止のため、鶏舎ごとの専用靴の備え付けや、鶏舎の破損箇所の修繕などが義務づけられている。野上農相は13日の記者会見で「各農場で管理が徹底されていなかったことが指摘されている。そうした中でウイルスが侵入したと考えている」と述べた。

 県幹部は「前回を教訓に、破損箇所の修繕などの指導は強化していたつもりだったが」と唇をかむ。県は県内業者に改めて対策の徹底を文書で求めた。ある養鶏業者の男性は「ネズミがかじったりして気付かないうちに壁などに穴ができることもある。いたちごっこだが、できる限りの対策をするほかない」と漏らす。

《読売新聞 2020/11/15 より引用》