県特産地鶏も偽装か 疑惑の業者
2011年06月27日
通常の鶏肉を比内地鶏として卸していた疑いがある七戸町の養鶏業「テンマ家禽(か・きん)農場」(天間富也社長)が、少なくとも2004年以降、一般鶏肉を県の特産地鶏「青森シャモロック」=キーワード=として売った疑いがあることも明らかになった。
青森シャモロックを出荷できるのは県内19の指定農場のみで、県は「他県の地鶏に比べても厳しく品質管理している」とするが、課題も浮き彫りになった。JAS法と景品表示法違反の可能性があり、県も調査している。
県によると、青森シャモロックを売るには、県農産物生産組合(五戸町)などからひなを仕入れ、マニュアルに従って飼育する必要がある。同農場は今年2月、青森シャモロックの農場指定を受けたが、4月に農場側の申し出で指定を解除している。
朝日新聞が入手した資料や複数の関係者の話によると、同農場は少なくとも04年3月から11年4月下旬まで、農場で飼っていた一般的なニワトリを青森シャモロックと称し、都内の飲食店や精肉卸会社などに出荷していたという。総売り上げは少なくとも521万円に上るとみられる。
農場関係者は「農場で飼っている一般的なニワトリを農場内で殺し、比内地鶏や青森シャモロックとして出荷していた」と話す。
納品書には「シャモロック地鶏」などと書き、1キロあたり約1300円で販売していた。一般的な鶏肉の倍ほどの価格だ。
出荷先には、ミシュランで一時、一つ星を得た東京都内のフランス料理店も含まれていた。同店は09年から今年はじめまで、同農場から仕入れた肉を「青森シャモロックのソテー」などとして客に提供していた。オーナーは「味は良かったんだが。何を信じればいいのか」と言葉を失った。
また、同農場と取引のあった都内の精肉卸会社の担当者は「急な注文にもすぐに対応してくれてありがたかったが、肉に毛がついたままの雑な処理も多かった」という。苦情を入れても改善されず、同社は今年2月に契約を打ち切った。
同農場の天間友一・前社長は朝日新聞の取材に、「息子(=社長)に聞いてみないと分からないが、息子は入院している」と応じた。ただ、青森シャモロックについては「農場では一度も扱ったことはない」とした。(藤原慎一、熊田志保)
◆キーワード=青森シャモロック◆
1990年に県畜産試験場(現県畜産研究所)が開発した地鶏で、横斑シャモの雄と横斑プリマスロックの雌をかけ合わせた一代交配種。92年から本格的に生産が開始され、2010年度は約7万羽が生産された。1羽(内臓抜き)3500~4千円程度で販売されている。肉のきめが細かく、味が濃厚なのが特徴。
《朝日新聞社asahi.com 2011年06月27日より引用》