20191205

日米貿易協定を承認 来月発効 農業支援積み増し


2019年12月05日

日米貿易協定が4日の国会で承認され、成立した。政府はこれを踏まえた、国内の農林水産業の新たな支援策をまとめた。米国産の農産品の関税引き下げで打撃を受ける農家の不満を抑えるため、今年度補正予算に昨年度より2%多い約3250億円の対策費を計上する方向で調整中だ。▼経済面=期待と不安、オピニオン面=社説

貿易協定の承認案は、データ取引のルールに関する日米デジタル貿易協定とともに4日の参院本会議で、自民、公明の与党と日本維新の会などの賛成多数で可決された。いずれも来年1月1日に発効する予定だ。

貿易協定では、牛肉や豚肉など米国の主要農産品の関税が、環太平洋経済連携協定(TPP)の加盟国並みに発効と同時に引き下げられる。一方、日本からの輸出では工業品を中心に関税が下がるものの、焦点の自動車関連品目の関税撤廃は継続協議となった。

政府は、すでに発効しているTPPや欧州連合との経済連携協定(EPA)向けの国内農家支援策の大綱を今回の貿易協定を踏まえて見直し、4日の自民党の会合で案を示した。5日に正式に決める予定だ。新たな支援策では、米国向け牛肉の低関税輸出枠の拡大を生かすため、肉用牛の生産拡大策を拡充する。子牛を産む雌牛を増やす際の奨励金はいま、飼育頭数にかかわらず一定額だが、頭数の少ない農家には積み増す。

政府はこうした対策費を毎年、補正予算に盛り込んでおり、今年度は約3250億円を計上する方向で最終調整中だ。昨年度から約60億円積み増す。ただ、昨年度までの国内対策費は、米国のTPP復帰を前提にしていた。政府は今回の協定で「すべての農産品の関税削減をTPP以下にとどめた」と強調しており、国会審議では予算を増額する理由が問われそうだ。(大日向寛文、北見英城)

 

■国内の農林水産業の支援策

<すでにある支援策>

・農地や畜産設備などの基盤強化
・チーズ向け生乳生産者の支援強化
・林道整備や高性能の林業機械の導入支援
・牛肉や豚肉の販売価格が生産費を下回った場合に生産者に支払う交付金の水準引き上げ

<新たな支援策>

・小規模の畜産農家の規模拡大支援を強化
・中山間地域のスマート農業導入支援を強化
・イチゴや和牛など日本の独自品種の知的財産権などの海外流出を防止

《朝日新聞社asahi.com 2019年12月05日より抜粋》

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