牛の凍結卵子で出産成功 ブランド牛の大量繁殖可能に
2010年09月03日16時11分
- 競りの再開を前に、殺処分された家畜のために黙祷(もくとう)する参加者=29日午前9時23分、宮崎県高千穂町、山本壮一郎撮影
- 再開された子牛の競り=29日午前10時32分、宮崎県高千穂町、山本壮一郎撮影
佐賀県畜産試験場は2日、牛の凍結保存した卵子を体外受精させ、子牛を出産させることに成功したと発表した。これまで、精子や受精卵を凍結保存する技術は確立されているが、卵子の凍結保存は難しかった。優秀な雌牛の卵子を大量に保存し、スーパー種牛の冷凍精液と交配させればブランド牛の大量繁殖が可能となるとしている。家畜の伝染病・口蹄疫(こうていえき)が流行して、大量の殺処分が行われた場合でも、速やかな産地復興に役立てるとの期待もある。
試験場では、特殊な溶液に浸した卵子をマイナス196度の液体窒素で凍結させて保存。解凍して体外受精させ、受精卵を再び凍結保存した後、母牛の体内に戻して子牛を出産させた。これまで多く用いられてきた凍結方法では、凍結の過程で卵子に傷が付き、受精に至らないことが多かったという。
試験場の詫摩(たくま)哲也獣医師は「前もって優秀な卵子を長期間冷凍保存しておけば、口蹄疫などが発生して殺処分が行われた場合でも、別の雌牛の母体を使って大量に優秀な子牛を産ませることができる。畜産業のリスク軽減にもつながる」と話している。
また、鹿児島大農学部の小島敏之教授(家畜臨床繁殖学)は、「伝染病が発生しても、優秀な雌雄を交配させることができる。さらに様々な雌雄の牛の人工授精もでき、ブランド牛の開発も進められるだろう」と評価する。(伊豆丸展代)
《朝日新聞社asahi.com 2010年09月03日より引用》