宮崎の口蹄疫、知事が終息宣言 1例目確認から4カ月
2010年08月27日10時21分
- 口蹄疫の終息を宣言する東国原英夫知事=27日午前9時32分、宮崎県庁、長沢幹城撮影
- 競りの再開が決まり畜産農家にも明るさが=25日午後、宮崎県高千穂町、大久保忠夫撮影
宮崎県で猛威を振るった家畜の伝染病・口蹄疫(こうていえき)について、東国原英夫知事は27日、記者会見を開き、終息を宣言した。この4カ月で、感染は292例、11市町に広がり、殺処分された牛や豚は県全体の2割以上の計約28万9千頭に及んだ。今後は被害を受けた農家やブランドの「宮崎牛」の復興、牛肉などの輸出が自由にできる「清浄国」への復帰などが課題となる。
午前9時半から県庁で会見した知事は、4カ月余りに及ぶ関係者の苦労や協力に感謝したうえで、「一日も早い再生・復興を目指した努力が必要だ」と述べ、全国のモデルとなるような安全・安心な畜産をめざす考えを示した。1例目が確認されたのは4月20日の都農町の牛農場。以後、7月4日の宮崎市の農場まで発生が続き、最も発生が集中した同県東部の川南町では、全体の67%となる計197例が発生。同町を含む都農、高鍋、新富、木城の隣接5町では牛や豚の家畜がすべていなくなった。
殺処分後は感染地と周辺の約1200カ所の農場に残る糞尿(ふんにょう)を堆肥(たいひ)化し、その発酵熱で潜伏しているおそれのあるウイルスを処理。畜産再開に向け万全を期してきた。
29日からは、中止・延期されていた県内の家畜の競りが順次再開される。県は31日から県内9カ所の発生農場に観察用の牛を入れ、3週間かけて安全を確認。9月中旬からは希望する農場にも観察牛を入れ、順次飼育を再開する。観察牛を使わない農家では、最初は数頭にとどめ、飼育14日目以降に家畜防疫員が立ち入り検査して、安全性を確認する。被害が集中した県東部の5町は、11月から飼育を再開する方針だ。
県家畜改良事業団(高鍋町)は終息宣言後、すぐに種牛の抗体検査をし、陰性を確認したうえで、農家に供給する冷凍精液の生産を再開する。事業団では「宮崎牛」ブランドを支える種牛55頭を一括管理してきたが、感染による殺処分で現在は山中に避難中のエース級の5頭にまで減り、新たな種牛候補の選抜も進めている。
県は口蹄疫による県内経済の被害を、5年間で2350億円と試算した。3日開会の9月議会には、復興のための基金の設置条例案を提案することを決めており、国に対し300億円規模の支援を要望している。うち3分の2は「経営再開までのつなぎには最も効果的」(県幹部)として公共事業費に充てるという。
《朝日新聞社asahi.com 2010年08月27日より引用》