国・県が求めた種牛の殺処分、畜産農家受け入れ
2010年07月16日13時31分
宮崎県の家畜伝染病、口蹄疫(こうていえき)の問題で、所有する種牛6頭の殺処分を東国原英夫知事から求められていた同県高鍋町の畜産農家、薦田長久(こもだ・ながひさ)さん(72)が、返答の期限とされていた16日午前、県庁を訪れ、知事に殺処分を受け入れることを告げた。
薦田さんは知事との会談後に記者会見し、「県の農家のために使って欲しいと言った種牛が殺処分となることは今でも納得いかない。しかし、県民のためにならないことはしてはいけないと思い、応じることにした」と話した。
また、薦田さんは、山田正彦農林水産相に対する抗議文と質問書を発表。抗議文では、殺処分勧告が出された時期は、口蹄疫対策特別措置法が定める「やむを得ない必要があるとき」に該当せず違法――などとし、終息に近い状況下で殺処分勧告をした理由などについて回答を求めている。山田農水相あてに郵送するという。
薦田さんの農場は、口蹄疫の発生が集中した県東部地域にある。感染拡大防止のため、一帯は家畜などの移動・搬出制限区域(発生農場から半径10キロ内・10~20キロ内)の指定を受け、5月には、移動制限区域が全家畜の殺処分を前提としたワクチン接種対象となった。薦田さんは飼育する他の牛について接種と殺処分に同意したが、種牛については、国と県の特例で生き延びた県管理の種牛と同様の扱いを求めていた。
知事は山田農水相の指示を受け、先月29日、口蹄疫対策特別措置法に基づき、薦田さんに種牛を殺処分するよう勧告。これに対し、薦田さん側が勧告取り消しを求める訴訟を起こす考えを示したため、知事は今月8日、薦田さんと面会し、種牛を県に無償で譲渡してもらうことで県有化し、特例による救済を求める方針を決定した。
しかし、農水相はこの方針に納得せず、16日午前0時に予定されていた同地域の移動・搬出制限区域解除も認めない考えを示したため、知事は再度、方針を転換。15日、薦田さんに面会し、改めて殺処分を求めていた。
知事が再度、殺処分を求めたことで、制限解除を国も承諾。薦田さんの農場を中心とする半径10キロ内を除き、16日午前0時に解除されている。
《朝日新聞社asahi.com 2010年07月16日より引用》