20191006

強毒の豚コレラ、韓国で感染拡大 北朝鮮のイノシシ運ぶ?


2019年10月06日

韓国の養豚場で、アフリカ豚コレラの発生が拡大している。感染ルートは不明だったが、10月に入って北朝鮮との境界付近で野生イノシシの死骸からウイルスが検出され、「北朝鮮説」が急浮上。韓国軍が南北軍事境界線付近で防疫活動に乗り出す騒ぎになっている。

アフリカ豚コレラは、日本国内で現在確認されている豚コレラより毒性が強く、家畜に感染すれば致死率が極めて高い。ワクチンもなく、水際の防止が重要とされている。韓国政府によると、9月16日に京畿道坡州市の養豚場から「母豚5頭が死んだ」と届け出があり、検査したところアフリカ豚コレラの陽性反応が出た。以後、10月3日までにソウル近郊の金浦市や仁川市を含めて計13カ所の養豚場で発生が確認された。

これまでの発生地域はいずれも、韓国北部。北朝鮮が今年5月、国際機関にアフリカ豚コレラの発生を報告していたことから、「北朝鮮からイノシシを通じて感染が広がった」という可能性が指摘されていたが、韓国軍は「完璧な鉄柵と警戒監視体制を備えており、韓国側に移動するのは不可能だ」(鄭景斗国防相)と説明していた。

ところが、2日になって北朝鮮と隔てる軍事境界線から約600メートルしか離れていない非武装地帯(DMZ)で野生イノシシの死骸が見つかり、翌日にはアフリカ豚コレラのウイルスが検出された。韓国軍は「台風や集中豪雨などで鉄柵が倒れる場合もある」と説明を変え、軍用ヘリを使って軍事境界線周辺に薬剤をまくなどの防疫作戦を展開すると明らかにした。

北朝鮮内のアフリカ豚コレラの発生実態は明らかになっていない。ただ、韓国の情報機関・国家情報院は9月24日の国会情報委員会で「一部地域では豚が全滅した」と報告した。

韓国内でも拡散を防ぐため、政府が決めた殺処分の対象は20万頭以上に達する見通しで、韓国国内の養豚の1・6%に相当する。豚肉はサムギョプサルなど韓国料理に欠かせないが、豚肉の卸売価格は上昇傾向にあり、豚肉を扱う業者は「さらに価格が上がれば、食堂経営者も市民も豚肉を買えなくなる」(ソウルの畜産市場で働く60歳の女性)と悲鳴を上げている。(ソウル=武田肇、鈴木拓也)

【写真説明】

アフリカ豚コレラの発生が確認された養豚場近くで車両の通行を制限する防疫当局者=9月17日、韓国・京畿道坡州市、東亜日報提供

《朝日新聞社asahi.com 2019年10月06日より抜粋》

 

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