20190928

豚コレラワクチン、9県を「接種推奨地域」 東海3県も 農水省方針 【名古屋】


2019年09月28日

豚コレラのワクチン接種の実施地域を検討してきた農林水産省は27日、飼育豚や野生イノシシの感染が確認されている9県を「接種推奨地域」とする方針を決めた。有識者らがまとめた新しい防疫指針案に沿ったもので、都道府県知事が対象の養豚場を決め、命令する仕組みとなる。

この日まとまった防疫指針案は、10月7日までの意見公募などを経て正式決定する。その後、各県知事が接種の是非や区域などを最終判断し、準備が整えば10月中にも接種が始まる。

指針案では、野生イノシシが感染源となっている現状を踏まえ、イノシシの感染が継続的に確認され、衛生管理の徹底だけでは感染防止が難しい場合、知事の判断で予防的にワクチンを接種することを認めた。その上で、イノシシの感染が多発するなど、豚への感染リスクが高い地域を「接種推奨地域」と位置づけ、接種を促すことにした。

この条件に当てはまるのは、飼育豚の感染が確認された岐阜、愛知、三重、福井、埼玉、長野の6県と、野生イノシシの感染が見つかった石川、富山、滋賀の3県。各県は接種する場合、事前に対象の区域や期間などをまとめた「接種プログラム」を作り、同省が確認した上で実施する。

対象の隣県にも接種を望む声があるが、同省幹部はこの日の説明で「ワクチンは抑制的に使うことが基本」と述べ、接種地域の拡大に慎重な姿勢を見せた。

接種した豚は接種歴を記録し、生きた豚、死骸、排泄(はいせつ)物などは原則として接種地域外に出回らないようにする。ただ、豚肉や加工品の流通制限は実効性がないなどとして見送られた。

当初は加工品を含めて流通を制限することで、国内に清浄地域を確保し、国際ルール上の「清浄国」の維持を模索した。このまま流通制限をせず、ワクチンを接種すれば「非清浄国」に転落するが、同省は「将来の早期復帰を目指す」としている。輸出への影響については、継続的に輸出できるよう相手国と協議を進めるという。

(兼田徳幸)

■地域分けずに/安全性、国が宣伝を

昨年9月、国内で26年ぶりに豚コレラの発生が確認された岐阜県。県養豚協会の吉野毅会長は「岐阜県は豚コレラで豚の約6割を失い、まったなしの状況だ。経営再開に強い意欲を持っている仲間も多く、ワクチン接種によって安心して養豚に取り組める」と胸をなで下ろした。古田肇知事も「発生県からの要請などを踏まえた柔軟な対応を打ち出された」と評価した。

岐阜県と三重県は国が求める「ワクチン接種プログラム」の検討や準備をすでに始めている。三重県は国の確認がとれ次第、すぐに接種できるように必要な資機材の確保などの準備を進める。鈴木英敬知事は「準備をさらに加速化し、万全の態勢を構築したい」とコメントした。

一方、同じ県内でも、どの地域でワクチンを接種するかは知事の判断にゆだねられた。愛知県内の養豚施設として初めて豚コレラの感染が確認されたトヨタファーム(豊田市)の鋤柄(すきがら)雄一さん(50)は「ワクチンを打つ地域と打たない地域を分けるのは現実的ではない。野生イノシシがウイルスを媒介していることを考えると狭い地域ではなく、より広い地域で接種すべきだ」と注文をつけた。

農水省はワクチン接種後の豚肉や加工品について、接種地以外への流通を認める方針を示した。

岐阜県畜産公社の浅野渉常務は「流通が制限されると影響が大きく、頭が痛い問題だと思っていた。制限されないなら混乱が少なくて済むだろう」と話す。ただ心配なのは風評被害だという。「安全性に問題ないことを国が消費者に宣伝してほしい」と話した。

愛知県の大村秀章知事も「豚肉が全国に流通可能となったのは一歩前進」と評価。ただ、ワクチン接種した生きた豚は原則、接種地域外に出回らないようにしなければならない。大村氏は「豚の取引価格が維持できるかどうかが危惧される」と懸念を示した。

【図】

豚コレラワクチンの「接種推奨地域」

《朝日新聞社asahi.com 2019年09月28日より抜粋》

 

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