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いつから接種?口蹄疫ワクチン 調整難航、見通し立たず


2010年05月21日1時22分

宮崎県で家畜の伝染病、口蹄疫(こうていえき)が広がっている問題で、発生農場から半径10キロ内での家畜へのワクチン接種の開始時期の見通しが立たない。政府は20日にも始めたい考えだったが、全頭殺処分が前提となることから、地元から「十分な補償が示される必要がある」との声が上がり、調整が難航しているためだ。

発生が集中し、接種の対象地域である同県川南町など2市7町の首長らは20日、県庁を訪問。ワクチン接種や殺処分された牛や豚の補償について、山田正彦・農林水産副大臣や東国原英夫・同県知事と非公開で協議した。

首長側が協議を求めたのは19日夜。同日に発表された政府の新たな対策を受けたもので、山田副大臣らは急きょ日程を変更して応じた。

新たな対策では、約20万5千頭の牛と豚にワクチンを打って感染拡大を抑えたうえで殺処分する。赤松広隆・農林水産相は、20日にもワクチン接種を始め、1週間程度で終えるのを目標、としていた。

これに先立つ18日には、山田副大臣らが川南町などに出向き、政府案を内々に打診。19日の正式発表後、「町長さんたちから、『国がそのように方針を決めたら、それなりに従ってやってみたいと思います』という話をいただいていた」と明かした。東国原知事も18日の定例記者会見で、ワクチン接種と全頭殺処分に対する考えを何度も問われ、「話し合っているんですよ、一生懸命、毎日寝ずに」と声を荒らげつつ、事前に検討していたことを示唆していた。

20日の協議では、首長側が「ワクチン接種に反対というわけではない」としながらも「十分な補償内容が示され、農家の同意を得たうえで始めてほしい」と要望。これに応え、山田副大臣は「補償は十分にする」と述べたが、「予算措置の話」として具体的な内容は示さず、「まずは一刻も早いワクチン接種を」と理解を求めたという。その結果、接種の開始時期は合意には至らなかった。

協議後、川南町の内野宮正英町長は「市町村や農家との協議がほとんどない」。東国原知事も「地元の理解を満足に得ずに発表したことへの疑問がある」と述べた。

この日の協議では「対策費の規模」も焦点になった。内野宮町長は、健康な家畜も殺処分となることに「(地元農家の)抵抗があるのは当然と思う。理解いただけるような補償がないと」と強調。東国原知事も「政府の対策本部長である総理が金額を明らかにしてほしい」と求めた。

ワクチンは19日夜、宮崎市内に到着。接種にあたる獣医師は50人程度を確保できたという。こうした準備は進んでいるが、再協議の場は未定という。山田副大臣は、協議後の記者会見で「(ワクチン接種の)必要性は理解してもらっている。なるべく早くしたい」と疲れた表情で語った。

《朝日新聞社asahi.com 2010年05月21日より引用》

 

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