(鹿児島)県北部、移動・搬出制限/口蹄疫疑い
2010年04月29日
県境からわずか2キロの宮崎県えびの市で口蹄疫(こうていえき)感染の疑いがある牛が見つかった。家畜伝染病予防法に基づく移動や搬出の制限区域には県北部地域も含まれる。県内での発生は確認されていないが、JA県経済連は5月に予定していた競りをすべて中止にするなど影響が広がっている。県は県境の幹線道路での消毒作業や、制限区域内で家畜を移動させないよう呼びかけるなど、本格的な防疫対策に乗り出した。
家畜を農場外に出すことができない移動制限区域(発生地点から半径10キロ)には伊佐市と湧水町の一部が入った。移動させてもよいが区域外に出すことは禁じた搬出制限区域(同半径20キロ)には霧島市とさつま町の一部が含まれた。搬出制限区域内で飼育されている牛や豚は573戸約13万7千頭で、県内の飼育数の1割弱に上る。
県は27日に伊藤祐一郎知事をトップとする対策本部を設置したばかりだが、えびの市での疑い例発生を受けて、県内6カ所に現地対策本部を設けた。県の出先機関も含めて全庁的に対策にあたる。
弓指博昭・県農政部長は「県内への侵入を許さないことが第一。制限エリア内の関係者は苦労が多いだろうが、初動が肝心なので協力をお願いしたい」と話した。
制限区域の指定を受け、JA県経済連は5月中に開催予定だったすべての子牛の競りを延期し、成牛と豚の競りを中止することを決めた。JAも対策本部を設置し、畜産農家への支援などを行う。
えびの市と県内をつなぐ主要幹線道路7カ所では、畜産関係車両への消毒作業も24時間態勢で始まった。湧水町北方の消毒ポイントでは、JAあいらの職員が県内に入ってくる家畜運搬や飼料配送の車両に消毒液を噴射した。 消毒作業にあたった担当者は「移動が制限されると農家は出荷ができない。その分、飼料代の経費がかさみ経営的にもきつくなる。また、感染の懸念もあり精神的にも大変だと思う」と畜産農家の苦悩を思いやった。
消毒作業は、県が備蓄していた消毒薬1600キロの一部も使い、自治体やJAとも協力して3週間程度続ける。 生産者らからは不安の声が相次ぐ。県が緊急に開いた畜産関係者向けの会議では、参加者から「消毒液が品薄になり始めている」「10キロや20キロの制限では焼け石に水だ。広範囲で消毒しないと鹿児島の畜産全体がだめになる」といった意見が出た。
制限区域にあたる湧水町の畜産農家は「感染が一番怖い。飼育舎の消毒など感染を防止するために全力で取り組みたい」と話していた。
《朝日新聞社asahi.com 2010年04月29日より引用》