20100218

(青森の元気!!)金子ファーム 七戸町 安全・安心な牛育成 /青森県


2010年02月18日

八甲田を望む自然豊かな金子ファームの始動は午前7時。従業員らによる牛の健康チェックのスタートだ。牛舎を回りながら、牛の目を見て「今日も元気かい」と、声をかける。

人なつっこい牛もゆっくり近づき、トウモロコシや大豆などの配合飼料とともに粗飼料といわれる稲わらを食べ始める。肉用牛を日本ハムや伊藤ハムなど大手食肉メーカーなどに卸す同ファームの肉質の評価が高いのは、ストレスをかけない牛の育て方と食べ物にあるという。

六ケ所村で創業後、七戸町に場所を移して始めた35年前は約70アールの土地に牛舎3棟、牛約50頭からスタートした。今では七戸町以外にも広げた農場は牧場と畑など合わせて約130ヘクタールに。ホルスタインや交雑種、日本単角種など約7千頭がいる。

このうち、月に600頭以上を出荷。県内でも生協で牛肉として、道の駅「しちのへ」などでは、牛肉を使ったレトルトカレーやビーフジャーキーなどの加工食品として消費者の手に渡る。

こだわり続けるのは、飼料の安全性だ。抗生物質は一切使わない。自社の農場の30ヘクタールでデントコーン(家畜用トウモロコシ)、70ヘクタールで牧草を作付けし、牛に与えている。畑には牛ふんの堆肥(たいひ)も利用している。ここ数年の飼料代の高騰もあり、今後も自社飼料を増やしていくという。稲わらは、近隣の米農家などから牛ふんで作った堆肥と交換してもらっている。

「草を食べるという牛本来の姿を大切にしたい。人の口に入るものだからこそ、神様が作ってくれた自然の姿が一番」と代表取締役の金子春雄社長(58)は話す。

景観も楽しんでもらおうと2008年から無農薬で菜の花の栽培も始めた。菜種油やハチミツも採取し、老人ホームや保育園にも配っている。

油を搾ったかすは牛の飼料になり、それを食べた牛のふんを使って堆肥を作り、土地を耕す。耕した土地に、デントコーンや牧草、菜の花などを作付けする――。

金子さんが目指す「循環型畜産」は09年の全国優良畜産経営管理技術発表会で最優秀賞の農林水産大臣賞を受賞した。こうした畜産のやり方を継いでくれる人を育成するため、県営農大学校生の実習受け入れもしている。

(石川瀬里)

 

◆循環型畜産でいい物を 金子春雄社長(58)

牛が食べるものは、ひいては人間が食べるもの。少しでもエサの経費が抑えられ、安全で安心な牛を育てられればという思いから循環型畜産を考えた。

牛は正直だ。ストレスが多ければ肉の色が濃くなり、牧草やトウモロコシを与えすぎればビタミンが過剰になり、脂肪が黄色くなってしまう。ただし、うちでは見た目をよくするために作っているわけではない。きれいな水と腹いっぱいの草を与え、清潔な場所を作ってあげることで結果を出してくれる。少しでも安全、安心できるいい物を作っていきたい。

六ケ所村出身で、父親も菜の花や雑穀を作っていた。小さいころはかんかん照りの中、菜の花を摘んでは広げて乾かして、と毎日のように手伝っていた。

苦痛で嫌な思い出しかないのに、どうしてもあの黄色い鮮やかな色に心が動いてしまい、土地も十分に確保できてきたので、菜の花の栽培を始めた。

 

■会社概要

金子ファーム 1971年1月、六ケ所村で牛10頭からスタート。75年に七戸町へ移転。現在は従業員20人、資本金300万円の有限会社。09年の年間売り上げは約30億7千万円に上る。

 

【写真説明】

従業員らはこまめに牛舎を見回り、牛の様子をチェックする。稲わらは県産品にこだわっている=七戸町の金子ファーム

 

《朝日新聞2010年02月18日より引用》

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です