20091130

心筋細胞、安全に再生 がん化リスク除去 慶大教授らが技術開発


2009年11月30日

心臓の心筋細胞をiPS(人工多能性幹)細胞などから安全に効率よく再生する技術を慶応大医学部の福田恵一教授(再生医学)らが開発した。がんになる危険性がある細胞を取り除き、心臓での定着率も向上した。29日付の米科学誌ネイチャー・メソッズ電子版で発表する。

福田教授らは、激しく伸縮する心筋細胞は細胞内でエネルギーを供給するミトコンドリアが多いことに着目。ヒトやマウスのiPS細胞、胚(はい)性幹細胞(ES細胞)からできた細胞の集まりの中に、ミトコンドリアで蛍光を出す色素を入れて心筋細胞を光らせ、細胞を1個ずつ分ける装置で心筋細胞を選び出した。

99%以上の純度で心筋細胞を精製でき、マウスに移植しても、がんはできなかった。精製をしない場合は、がんができた。従来の比重差などによる精製では、純度は80%程度でがん化の恐れがあった。

また、マウスの心臓に移植した心筋細胞は、8週間後でも90%以上が生き残った。これまでは3%以下だったが、心筋細胞を千個程度集めて塊を作って移植する方法で生着率を高めた。

iPS細胞やES細胞は一部の細胞が異常増殖してがん化の危険性がある。今回の成果で、心臓移植が必要な患者の治療に向けた心筋再生の実用化に一歩近づいた。(編集委員・浅井文和)

 

《朝日新聞2009年11月30日より引用》

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