iPS、新たに2特許 京大、体細胞の作製法など
2009年11月26日
京都大学の山中伸弥教授らが開発したiPS(人工多能性幹)細胞について、三つの遺伝子から作る方法と、iPS細胞から心筋などの体細胞を作る方法の二つの特許が国内で成立した。京都大が25日発表した。マウスだけでなくヒトも含み、昨年成立した4遺伝子による作製法に加え、特許の権利範囲が広がった。ただ、ほかの遺伝子や化合物で作る研究競争も盛んで、今後、どこまで権利が及ぶのか不透明な部分も残る。
今回、新たに二つの特許が成立した。一つは、皮膚などの体細胞に3遺伝子を入れて、特定の培養条件でiPS細胞を作る方法。がん遺伝子を使わず、より安全なiPS細胞ができる。もう一つは、三つまたは四つの遺伝子で作ったiPS細胞から、心筋などの体細胞を作る方法。
iPS細胞は心筋、肝臓の細胞などに分化させて、薬の効果判定や、移植医療へ応用される。分化させた細胞の利用でも、元の細胞がこれらの手法で作ったiPS細胞ならば、細胞の種類を特定せず、あらゆる体細胞作製法に特許の権利が及ぶことになる。
ただし、今回の特許は、遺伝子の種類が限定されている。ほかの遺伝子や化合物などで作る手法の研究も盛んで、今後、新たな特許が成立する可能性もある。国際特許の取得も今後の焦点だ。
山中教授は会見で「再生医療などで最終的にiPS細胞を使う時には何十、何百の特許が必要になり、一つの研究機関ですべてカバーできないが、重要な特許を押さえることができた」と話した。(瀬川茂子、木村俊介)
◆権利広がった
政策研究大学院大学の隅蔵康一准教授の話 今回の特許では、iPS細胞から心筋を作る方法などと限定せずに、神経、心筋など体細胞全般の作製に権利が及び、対象が広い。昨年の特許より、国内の権利はかなり広がった。
【図】
新たに成立した京大の特許
《朝日新聞2009年11月26日より引用》