20090819

牛の受胎率、年々低下 改良で大型化・肥満化が影響?


2009年08月19日17時0分

人工授精で繁殖されている乳牛や肉牛の受胎率が、年々低下し続けている。乳牛はより乳量の多い大型化、肉牛は霜降りの度合いが高い肥満化が進んでいる。こうした改良の影響などが指摘されているが、原因ははっきりせず、解決策はみえてこない。

乳牛や肉牛はほとんどが凍結精液による人工授精で繁殖されている。精子を採取・頒布している家畜改良事業団は毎年、約30府県の100人ほどの人工授精師に自分が種付けをした牛の受胎率を報告してもらい、集計している。

それによると、乳牛の最初の種付けでの受胎率は、93年までは62%前後だったのが、それ以降低下し始め、05年からは50%を割り続けている。

肉牛も93年までは67%前後だったのが、05年以降は60%を切るようになった。

畜産草地研究所などが昨年、九州、沖縄地区の人工授精師・獣医師約300人にアンケートしたら、43%が「種付きが悪くなっている実感がある」と答えた。人工授精の時期を見極めるのに大切な雌牛の発情の兆候も66%が「悪くなっている」と答えた。

同研究所の平子誠・上席研究員(繁殖学)は、受胎率低下の要因について「乳牛では1頭あたりの乳量が毎年100キロずつ増えるなど、より乳量が多い牛へと改良が進んでおり、こうした改良の影響が大きい」とみる。

乳量が増えると雌牛がエネルギーが不足に陥り、性ホルモンの分泌が抑制されるなど生殖機能への影響が考えられるからだ。また乳量の多い牛は体格も大きく、平子さんは「体内の熱が逃げにくくなって暑さにも弱くなってきた。温暖化の影響も加味されているのではないか」という。

さらに、酪農学園大の堂地修教授(繁殖学)は「乳牛では放牧せずに、一定の仕切り内で放し飼いする『フリーストール方式』が普及し、日光浴もできないような環境で暮らす牛も出てきた影響もあるのではないか」と指摘する。

受胎率の低下は、こうした複数の要因がからみあって起こっているとみられるが、特定できていない。(本多昭彦)

 

《朝日新聞社asahi.com 2009年08月19日より引用》

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