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WHO、パンデミック宣言 新型インフル「フェーズ6」


2009年06月12日1時15分

世界保健機関(WHO)は11日、新型の豚インフルエンザの警戒レベルを現行のフェーズ5から、世界的大流行(パンデミック)を意味する最高度のフェーズ6に上げることを宣言した。インフルエンザシーズンを迎えつつある南半球に感染が及んだことが決め手となった。大流行は「香港風邪」以来、41年ぶりとなる。

WHOのマーガレット・チャン事務局長は11日午後6時(日本時間12日午前1時)過ぎに記者会見し、大流行を正式に宣言。「感染の拡大を止めることはできない」と述べた。今回の新型を「2009インフルエンザ」と名付けたことも明らかにした。

厚生労働省の担当者は11日、この決定に先立ち、大流行が宣言された場合の対応について、「これまでの(政府の)方針に沿って、感染拡大防止に努める」とし、現状では国内対策の警戒レベル引き上げは考えていないことを明らかにした。

ただ、WHOが宣言したことで、国によっては移動や集会の制限などを検討する可能性があり、市民生活や世界経済などに影響が出かねない。

このためWHOは過剰反応を戒めており、「渡航・貿易制限や国境閉鎖はすべきではない」と改めて求めている。

WHOの基準では、感染が広がっている米州地域以外の1カ国で「地域社会レベルの人から人への持続的感染」が確認されれば、フェーズ6の要件が満たされる。

冬を迎えた南半球では6月に入り、感染の拡大が著しい。11日現在で豪州は1307人、10日現在で南米チリは1694人の感染者が確認されている。特に、感染者が1千人を超えた豪州ビクトリア州で、人から人への持続的感染が確認されたことが、今回の大きな決定要因となった。

WHOが確認した世界の感染者は10日朝現在で75カ国・地域の2万7737人。大半は軽症で済んでいるが、死者は141人になっている。

WHOは、今回の新型インフルの「重症度」は「中等度」であると評価した。「軽度」としなかったのは、「今回、死亡、重症化した人の大半は、30~50代だったことなどを考慮に入れた」(チャン事務局長)という。

各国政府に対し、状況に応じて、感染拡大防止から、医薬品以外の対処法を含めた感染症状の緩和策にシフトさせていくべきだと求めている。

WHOは、医療態勢や医薬品が十分でないアフリカなどの途上国で今後、感染の影響がどのように出るか懸念、これまでに抗ウイルス薬やワクチンメーカーと途上国への提供について議論してきた。

「季節性インフルエンザワクチンの製造は間もなく終了し、今後数カ月の間に新型インフルワクチンを可能な限り多く供給ができるような製造態勢を取ることができるようになるだろう」としている。

人類は20世紀にインフルエンザの世界的大流行を3度経験した。今回は21世紀初の大流行となる。(大岩ゆり、編集委員・浅井文和、ジュネーブ=飯竹恒一)

 

《朝日新聞社asahi.com 2009年06月12日より引用》

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