20090509c

WHO、欧州を注視 「パンデミック宣言」難しい判断


2009年05月09日2時31分

【ジュネーブ=井田香奈子】新型の豚インフルエンザの流行で、世界保健機関(WHO)は、警戒レベルを現在のフェーズ5から6に上げ「世界的大流行(パンデミック)」を宣言すべきか、北米に続いて感染が広がりつつある欧州を注視している。だが、最近の報告例は比較的軽症が中心で、社会や経済への影響もふまえ、難しい判断を迫られている。

WHOのフクダ事務局長補は7日の記者会見で、欧州で「米大陸のような持続的な広がりは確認されていない」と、フェーズ5に据え置く理由を説明した。

欧州疾病対策センター(ECDC、ストックホルム)の8日のまとめでは、スペインや英国など13カ国で156人が感染。うち22人が欧州域内での感染だが、いずれも北米から帰国した感染者の家族や友人で、「持続的な感染の広がり」の目安とされる「人から人、さらに人に感染する3世代の感染」はないとみられる。

WHOの定義では、世界を6地域に分けたうちの2地域以上の複数の国で「3世代」感染が見つかれば、パンデミック宣言の要件は整う。このため米大陸に続き、欧州の行方がカギとなる。

WHOは「穏やかな症状でもパンデミック宣言を出すことはありえる」としている。しかしECDCの専門家は「さほど症状が重くないのにパンデミック宣言を出せば、より否定的な効果を引き起こしかねない」と指摘する。

運輸、貿易など経済活動にも大きな影響が出るのは必至だ。欧州連合(EU)からは経済危機下のさらなる逆風を懸念する声が出ている。

WHO内部にも葛藤(かっとう)がある。03年の新型肺炎SARSの流行の際は、現在の警戒システムがなくWHOが独自に渡航規制を求めたが「過剰反応」という批判を浴びた。

フクダ事務局長補は警戒レベルの決定について「医学的な見地に基づいて判断する」としていたが、5日の会見で「政治的、経済的な影響も十分考慮している」と述べるなど、揺れている。

 

《朝日新聞社asahi.com 2009年05月09日より引用》

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です