豚インフル防止に各国躍起 中国「すみやかに公表」
2009年04月28日22時43分
豚インフルエンザの感染拡大を受け、世界中の国々が対応に追われている。6年前の新型肺炎(SARS)の流行で多くの死者を出したアジアでは、当局が警戒を強め、空港での検疫を強化。欧州などでも米大陸への渡航自粛を呼びかける動きが出ている。
●韓国
韓国の保健福祉家族省は28日、国内で豚インフルエンザに感染した疑いがあるとした51歳の女性を、病院への隔離が必要で感染の疑いが濃い「推定患者」に格上げした。19日からメキシコ南部を旅行して26日に帰国した。熱、せきや鼻水の症状があり、抗ウイルス薬で治療中。同じ帰国便に乗っていた315人の追跡調査もしているほか、女性と同じ建物にいた40人に抗ウイルス薬を投与した。
「推定患者」発生を受け、同省は伝染病に関連する国家的危機状況を4段階で表す「国家災難段階」を、最低レベルの「関心(ブルー)」から3番目の「注意(イエロー)」に引き上げた。李明博(イ・ミョンバク)大統領は28日夕、緊急関係閣僚会議を開き、「国民が不安に陥らないよう、情報収集や防疫体制などを徹底してほしい」と指示した。
●中国
中国政府は28日、国務院常務会議で対策を協議。衛生水準が低い農村で発症すれば急速に広がる恐れがあり、温家宝(ウェン・チアパオ)首相は「中国に侵入する可能性は排除できず、警戒を怠ってはならない」と指示した。
03年にSARSが流行した際には、情報隠しが感染拡大を招いたと批判された。会議では新型インフルエンザの通報制度創設を決め、各部門に「感染が疑われる症例が見つかったら、すみやかに公表する」ことを通知した。
衛生省は28日、世界保健機関(WHO)北京事務所とも協議。同事務所の担当者は「中国で感染を懸念する具体的な状況にはない」と話した。
中国は世界有数の豚肉生産国で、約4億4千万頭を飼育する。今後、養豚場や市場で検査を実施する。
香港では、豚インフルエンザの流行地域から戻った7人に発熱などの症状がみられ、うち3人は無関係と確認され、4人の検査が続いている。03年にSARSが流行した香港では今回も不安が広がり、マスクが品薄だ。
●台湾
台湾も厳戒態勢。27日に豚インフルエンザを最高レベル「第1類法定伝染病」に指定。感染対策指揮センターを設置した。29日朝から米大陸発の航空機について、到着後に乗客が出る前に検疫官が乗り込み、感染の疑いがある者がいないか確認する。
●ニュージーランド
感染者が初めて確認されたニュージーランドでは、住民の間に不安が広がる。オークランドのある住民の話では、風邪がはやり始めた時期とあって感染を心配した多くの市民が病院へ検査に訪れている。この住民の勤務先では全員にタミフルが配られた。
●オーストラリア
オーストラリア保健当局者は28日、国内で計70人が豚インフルエンザに感染した疑いがあるとして検査を受けていることを明らかにした。同当局者によると、各地の空港では米国などから来た航空機に対し、着陸前にパイロットと連絡をとり、症状の出ている乗客、乗務員を確認する作業を始めた。
●英国
英外務省は27日夜、重要な事情以外のメキシコへの渡航は控えるよう勧告した。このため28日朝、格安航空会社トムソンが、ロンドンとマンチェスターからメキシコのカンクンに向かう予定だった2便を取り消した。客には全額払い戻しや、旅行先の変更で対応。メキシコにいる客を帰国させる便も手配する。
●スペイン
2人の感染者が出たスペインでも、外務省が国民に対し、メキシコへの渡航を延期し、米国への渡航も考え直すよう呼びかけている。著名な闘牛士フリアン・ロペス氏は、メキシコで予定していた闘牛の興行を取り消したと27日明らかにした。興行主とも相談のうえ決断したという。
《朝日新聞社asahi.com 2009年04月28日より引用》