20190309

和牛受精卵、輸出疑い 検査受けず中国へ 大阪府警逮捕


2019年03月09日

和牛の受精卵と精液を検査を受けずに中国に持ち出そうとしたとして、大阪府警は9日、府内の男2人を家畜伝染病予防法(輸出検査)違反と関税法違反容疑で逮捕し、発表した。農林水産省は和牛の受精卵などを「遺伝資源」として保護する動きを進めているが、遺伝資源の持ち出しをめぐり立件されたのは初とみられる。▼10面=「宝」流出危機

2人は運搬を依頼したとされる飲食店経営の前田裕介容疑者(51)=同府藤井寺市=と、中国へ運搬したとされる無職の小倉利紀容疑者(64)=大阪市住吉区。生活環境課によると、2人は和牛の受精卵と精液を中国へ持ち出すことを計画。容器に詰めて府内の港で農水省動物検疫所の輸出検査を受けずに中国行きの船に載せ、昨年7月、持ち出そうとした疑いがある。

しかし中国到着後、検疫証明書がなかったため「輸入不可」とされ、小倉容疑者は帰国。日本側の動物検疫所で受精卵について申告したため発覚し、農水省が府警に告発していた。

小倉容疑者は農水省に「(前田容疑者に)依頼された」と説明。一方、前田容疑者は取材に知人の中国人から「和牛の精液を上海まで持ってきて欲しい」と頼まれたと明かした。これまでの捜査で流出元は徳島県内の畜産農家と判明。府警は流出の経緯を調べている。

農水省によると、生きた和牛や精液が米国へ輸出されており、さらに輸出された豪州で「WAGYU」として広まった。だが業界団体の自粛や日本国内での口蹄疫(こうていえき)の発生もあり、1999年以降、和牛の精液や受精卵は輸出されていない。

府警は今回、持ち出される際に家畜防疫官による検査を受けていない疑いがあることに着目し、家畜伝染病予防法を適用した。府警は、何者かが海外でも人気の高い和牛の遺伝資源を入手しようとしたとみて調べている。(米田優人、藤波優)

◆キーワード

<和牛> 国内で生まれ育った「黒毛和種」と「褐(あか)毛和種」「日本短角種」「無角和種」の4種と、これらの間で交配させた牛を指す。農林水産省によると、2017年度の生産量は約14万5千トン。ホルスタインやホルスタインと黒毛和種を交配させたものは「国産牛」と呼ばれ、区別される。

【写真説明】

黒毛和種=独立行政法人家畜改良センター提供

《朝日新聞社asahi.com 2019年03月09日より抜粋》

 

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