20090212

犬思いの「美犬審査」に 健康重視へ基準変更 英国の愛犬家団体


2009年02月12日3時0分

しわくちゃ顔でほおが垂れ、鼻ぺちゃ。こんなブルドッグの姿が変わってしまうかもしれない。人の好みの純血犬をつくろうと交配を繰り返した結果、犬の健康に問題が出始めたため、英国の愛犬家団体が犬の審査基準を健康重視に変えた。人が、数百年にわたってつくってきた純血犬の美の基準が変わりそうだ。

団体は世界最古の愛犬家団体、英ケネルクラブ(KC=1873年設立)。英国ゆかりのブルドッグやラブラドルレトリバーなど76犬種の審査基準のうち209項目の変更を決めた。3月に英国で催す世界最大級のドッグショー「クラフツ」で適用する。日本をはじめ、84の国・地域が加盟する国際畜犬連盟(FCI)には約340種の純血犬が登録されている。KCは未加盟だが、FCIは犬の原産国の基準を重視するため、KCの基準変更の影響は大きい。各国のブリーダーや愛犬家はドッグショーで優勝できる犬づくりをめざして交配を計画するため、審査基準が変わると犬のスタイルは徐々に変わることになる。

犬は、近親間や若齢間での交配を繰り返すと、体の末端の萎縮(いしゅく)が起こる。人の好みで、鼻がぺちゃんこになったブルドッグやパグはその代償として呼吸困難気味で体温調節が苦手だ。それでも、しわやほおのたるみなどの特徴を誇張する交配が続き、重い障害が問題になってきた。

このためKCは5年前から基準変更の検討をしていた。新基準では、ブルドッグはほおの垂れ下がりを減らし、少し長めの脚、やや細めの体を求めた。ダックスフントは目などの障害が遺伝的に出やすい白斑の入ったダブルダップルという毛色の犬は認めないとの規定を盛り込んだ。

日本のジャパンケネルクラブ(JKC)で犬の基準を検討する福山英也・ヤマザキ動物看護短大元教授は「人は犬に芸術性も求めており、犬の健康とのかねあいは難しい。しかし、FCIが基準変更に動けばJKCも検討せざるをえない」と話している。(本多昭彦)

■主な犬種の審査基準の変更点(英ケネルクラブによる)

<ブルドッグ>
「上唇が両あごより下に垂れ下がる」という表記を削除

<パグ>
「過剰な鼻のしわは認められない」を追加

<シーズー>
「毛によって犬の視覚に影響が出ないように」を追加

<チャウチャウ>
「ぎこちない歩き方」を削除

<ダックスフント>
「体と地面の間が自由に動ける余裕があるように」を追加

<ラブラドルレトリバー>
「(胸の大きさについて)過剰な体重増加の効果で見せてはならない」を追加

(イラストは日本畜犬学会の資料にもとづき作製)

 

《朝日新聞社asahi.com 2009年02月12日より引用》

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