20090109

飛騨牛・元祖のクローン牛誕生 死後13年の冷凍細胞で


2009年01月09日3時1分

「安福」の冷凍細胞から生まれたクローン牛の「望安福」1号(左)と4号=岐阜県高山市の県畜産研究所、中沢写す

「安福」の冷凍細胞から生まれたクローン牛の「望安福」1号(左)と4号=岐阜県高山市の県畜産研究所、中沢写す

岐阜県産の飛騨牛ブランドの元祖の種雄牛(しゅゆうぎゅう)「安福(やすふく)」号の冷凍細胞から、安福と同じ遺伝子を持つクローン牛を誕生させることに成功したと、近畿大と岐阜県畜産研究所が8日、共同発表した。安福は93年9月に老衰で死んだが、精巣だけ冷凍保存されていた。長期保存の体細胞を使ったクローン牛の誕生は世界初とされる。 肉は食用に利用する計画はない。だが、近畿大によると、安福の生存当時は不可能だったおいしさを生む遺伝子情報の解明や、マンモスなど絶滅動物の遺伝資源の再生に期待が持てるという。研究成果は同日付の米オンライン科学誌に載った。

会見によると、最初のクローン子牛は07年11月30日に誕生。「望安福(のぞみやすふく)」と名付けられた。昨年7月までに4頭が生まれたが、2頭が死んだ。死因は一般的な感染症とみられるという。

農林水産省によると、受精卵ではなく体細胞を使ったクローン牛は国内で557頭生まれたが、いずれも生きている牛の体細胞が使われた。

これに対し、今回は死後13年の安福の冷凍保存細胞が使われた点で画期的という。同大生物理工学部の佐伯和弘教授によると、安福の埋葬前に精巣を取り出し、零下80度の冷凍庫で保存した。世界初の体細胞クローン羊「ドリー」誕生が公表された97年より4年も前で、細胞保存のための凍結保護剤も一切使われていなかった。

近畿大と畜産研は04年から共同研究を本格化。精巣の一部を切り刻んで特殊な培養液で培養したところ、染色体に異常のない生きた細胞を取り出すことができた。それらの細胞から核を取り出し、16個の胚(はい)をつくり、メス牛に移植。5頭が受胎して、4頭から子牛が生まれたという。

安福は80年に兵庫県で生まれ、翌年、種雄牛オークションで当時最高値の1千万円で岐阜県が落札した。安福の精液で生まれた子牛は約4万頭。約68万頭の日本の黒毛和種の30%が血を引くという。(中沢一議)

 

《朝日新聞社asahi.com 2009年01月09日より引用》

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