20080803

難病患者からiPS細胞作製 米大チーム、病態解明に光


2008年08月03日

高齢の神経難病患者の皮膚細胞からまず万能細胞(iPS細胞)を作製、運動神経などの細胞まで作り出すことに、米ハーバード大のケビン・エガン准教授とコロンビア大の研究チームが成功した。

健康な人の細胞から万能細胞を作った報告例はすでにあるが、患者の細胞を利用して万能細胞を作り出したとする論文は初めてという。病態の解明に大いに役立ちそうだ。

患者は82歳と89歳の姉妹。運動神経が侵される遺伝性の筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症(ALS)で、進行すると食べ物をのみ込んだり、手足を動かしたりしにくくなる。高齢者で遺伝子異常などを抱える患者の体細胞からでも、健康な人と同様に万能細胞ができるかどうか、そこから神経などの細胞を作製できるかは焦点の一つだった。

エガン准教授らは、京都大の山中伸弥教授が開発した四つの遺伝子を皮膚細胞に組み込む方法を使って、iPS細胞を作製。さらに、受精卵から作る万能細胞(ES細胞)で開発された方法を使うことで、患者の遺伝情報を持つ運動神経(ニューロン)と中枢神経系のグリア細胞といった体細胞にまで分化させることに成功した。

ALSは、発症の仕組みが分からず、まだ有効な治療法もない。これまで、病態解明や治療法の開発については、マウスやサルなどでの実験に頼らざるをえなかった。今回作製したiPS細胞は、治療法開発を視野に入れた病気の発症メカニズム解明につながる可能性がある。(竹石涼子)

 

《朝日新聞社asahi.com 2008年08月03日より引用》

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