iPS細胞、作製効率100倍に 米教授がマウスで成功
2008年06月23日3時2分
体細胞から万能細胞(iPS細胞)をつくる過程で特定の化合物を加え、作製効率をこれまでの100倍以上にすることに、米ハーバード大のダグラス・メルトン教授らがマウスで成功した。人間でも同じ方法で効率が上がるとしている。22日付の米科学誌ネイチャー・バイオテクノロジー(電子版)に発表する。
iPS細胞は、皮膚などの細胞に万能化(多能化)にかかわる複数の遺伝子を導入してつくる。メルトン教授らは京都大の山中伸弥教授と同じ四つの遺伝子を使い、特定のたんぱく質の合成を妨げる物質や酵素など7種類の化合物を加え、それぞれ効率を調べた。
化合物を加えないときの遺伝子の導入効率は0.01~0.05%。それが「バルプロ酸」というたんぱく質合成阻害剤を加えると、9.6~14%程度にまで高まった。
四つの遺伝子から、細胞のがん化にかかわる遺伝子をのぞいた三つの遺伝子を使う作製法では、これまで遺伝子の導入効率は0.001%程度とさらに低かったが、バルプロ酸を加えると、こちらも効率が約50倍になった。
バルプロ酸を加えると、多能化にかかわる遺伝子が活性化されるためらしい。
山中教授は「マウスでの成果とはいえ、大きな前進だ。今後、化合物の添加が遺伝子に変異を起こさないかどうかなど、安全性の検討が必要になってくる」と話す。(竹石涼子)
《朝日新聞社asahi.com 2008年06月23日より引用》