豚コレラ、終息見えず 養豚業界、疲労濃く 岐阜で7例目 【名古屋】
2019年01月30日
岐阜県各務原市の養豚場の豚が、豚(とん)コレラウイルスに感染していたことが29日、明らかになった。岐阜県では飼育下の豚やイノシシへの感染は7例目になる。国や県の調査チームは感染経路などの調査を続け、飼育施設は対策を進めるが、終息は見通せていない。
県によると、28日午前8時ごろ、養豚場から県に「複数頭の豚に発熱、呼吸器症状がある」と連絡が入った。立ち入り検査で子豚1頭の死亡が確認され、県の遺伝子検査で陽性反応が出たため、県と国の協議を経て、29日午前、豚コレラと判定。県は自衛隊に災害派遣を要請した。
養豚場では29日午前9時から計1585頭の殺処分が始まり、午後4時までに1079頭が処分された。同じ養豚場から28日に豚17頭が出荷された岐阜市内の食肉処理場でも、29日夕方、感染拡大を防ぐため、ほかの飼育施設から出荷された豚も含めた計149頭の殺処分が始まった。
岐阜県内の豚コレラは昨年9月に国内で26年ぶりに確認されて以来、感染が拡大。野生のイノシシでもこれまでに108頭への感染が確認された。一方、豚コレラは人には感染せず、感染した豚の肉を食べても健康への影響はない。
養豚の現場では、止まらぬ感染拡大に疲労の色を濃くしている。JAぎふ園芸畜産課の担当者は「感染経路が不明で、(生産者に)何をしてもらえばよいのか手詰まりの状態」と嘆く。「(現状は)対症療法の状態で、感染経路が特定されるなどして効果的な対策が出てほしい」と訴える。
日本養豚協会(事務局・東京)は、昨年の発生時から会員にメールやファクスで防疫の徹底を促す。担当者は「現状ではイノシシ、野鳥、ネズミなどが入らないように対策を徹底するしかないのでは」と話す。
県も加わる農林水産省の疫学調査チームは発生源や感染経路を特定しようとしている。チームは6人の委員と13人の臨時委員らで構成。殺処分前の豚の血液を検査し、養豚場でのワイヤメッシュ柵の設置状況や侵入防止ネットの隙間の有無なども調べているが、特定には至っていない。
それでも岐阜県の古田肇知事は29日午前の岐阜県家畜伝染病防疫対策本部員会議で「原因の究明が不可欠」と発言。疫学調査チームの調査に期待した。(板倉吉延、室田賢)
【写真説明】
豚コレラが発生した養豚場で処分を進める作業員ら。すぐ近くに犬山城が見える=29日午後、岐阜県各務原市、吉本美奈子撮影
【図】
野生のイノシシに豚コレラが出た自治体/飼育下で豚コレラが確認された施設
《朝日新聞社asahi.com 2019年01月30日より抜粋》