20071031

姉の凍結卵巣組織、がん治療で機能を失った妹に移植


2007年10月31日16時07分

がんの治療で卵巣の機能を失った妹に、凍結した姉の卵巣組織を移植する手術が、米ミズーリ州で29日(日本時間同日深夜)、日米のグループによって行われた。成功すれば、一卵性ではない姉妹間では初のケースになるといい、新しい不妊治療などに道を開く可能性がある。

凍結していた卵巣組織を解かす作業を加藤レディスクリニック(東京都)の香川則子研究員が、組織の移植を現地のシャーマン・シルバー博士らが担当し、手術は無事終わった。

提供を受けたのは、悪性リンパ腫だった30歳の米国人女性で、骨髄移植に伴う放射線治療などで卵巣機能を失った。提供者は1歳年上の姉で、骨髄も提供した。

姉は今年2月、二つある卵巣のうち一つを妹に提供したが、つないだ血管を血液がうまく流れなかった。このとき取り出した卵巣の表面の一部を凍結保存し、今回、移植した。卵巣組織は凍結保存は難しいものの移植は比較的やさしく、体にくっつけば3~6年の間、生殖機能の復活が期待できるという。子どもが生まれると、遺伝的には姉の子となる。

がんの治療後も出産の可能性を残す目的で、日本では卵子の凍結が試みられている。ただ、技術が難しく、採取できる卵子の数も限られるため、国内では慶応大や岡山大などが、がん患者の卵巣凍結を計画中だ。

卵巣が機能を失ってホルモン環境が変わると、動脈硬化や骨粗鬆症(こつそしょうしょう)などのリスクが上がるとされる。米国では、健康な女性が卵巣組織をあらかじめ凍結保存し、閉経が迫るころに自身に戻して閉経を先延ばしする「卵巣バンク」の手法としても注目されている。

 

《朝日新聞社asahi.com 2007年10月31日より引用》

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