20070903

耐性菌、野生動物にも 人への影響、監視必要


2007年09月03日10時08分

耐性菌の広がり

耐性菌の広がり

絶滅の恐れのあるヤンバルクイナやアマミノクロウサギなど15種以上の野生動物が、抗生物質(抗菌剤)の効かない耐性菌に汚染されていることが、岐阜大や酪農学園大などの研究でわかった。抗菌剤の乱用で出現する耐性菌が、医療や畜産の現場だけでなく、環境中にまで拡散している実態がはっきりした。

岐阜大の福士秀人教授らのチームは、環境省やんばる野生生物保護センターなどの協力で、抗菌剤とは無縁のはずの野生動物の糞(ふん)を集め、腸内細菌に耐性菌がいないか、分析した。

この結果、北海道のタンチョウのほか、沖縄県のヤンバルクイナ、ノグチゲラなどの野鳥、野生化したマングース、野ネコなど15種、285個体から採取した大腸菌や腸球菌から、抗菌剤に抵抗力をつけた耐性菌が見つかった。耐性菌の割合は平均で20~25%だった。7種類の抗菌剤が効かない菌も見つかった。

酪農学園大の田村豊教授や東京大医科学研究所の調査でも、06~07年に鹿児島県・奄美大島で集めたアマミノクロウサギの糞128検体から採れた大腸菌の2%は耐性菌だった。また、北海道の原生林で捕獲した野ネズミ196匹の7%からも耐性菌が見つかった。日本で野生化したアライグマからは、10種類の抗菌剤が効かない大腸菌が見つかった。

抗菌剤は人間や家畜の治療用だけでなく、農薬などとしても広く使われている。人間などの排泄(はいせつ)物をはじめ、さまざまな経路で耐性菌が環境中に広まった可能性がある。

院内感染で広がる耐性菌としては、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)やバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)が代表例だ。環境中に耐性菌が広まれば、人間への感染防止策がより難しくなるほか、抗菌剤の効かない新たな病原菌が出現する危険性もある。

田村教授らの研究成果は3日の日本獣医学会で発表される。

 

《朝日新聞社asahi.com 2007年09月03日より引用》

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