「3つの顔」もつたんぱく質解明 染色体形成でも役割
2007年07月27日17時56分
細胞が分裂する時に、遺伝情報を収納する染色体をつくるうえで必須のたんぱく質を、大阪大工学研究科の松永幸大(さちひろ)講師(分子遺伝学)らの研究グループがみつけ、26日付の米科学誌カレント・バイオロジー電子版に発表した。このたんぱく質はすでに二つの機能が知られており、今回発見の機能が三つ目。研究グループは、三つの顔を持つ仏法の守護神にちなみ「ASURA(アシュラ)」と命名した。
染色体は、DNAがまとまったもので、ヒトでは23対46本ある。男性のY染色体をのぞき、すべてX字形をしており、左右対称に同じ遺伝情報がある。研究では、アシュラがヒト細胞でX染色体の要になる部分に作用し、細胞分裂の途中まで左右をつなぎとめる役割をすることを突き止めた。アシュラがないと、染色体がうまく形作られず、遺伝情報がバラバラになり、分裂がうまくいかなかった。
このたんぱく質は、細胞内で酸素呼吸にかかわるミトコンドリアを形成する機能と、排卵を促す女性ホルモンの作用を抑制する機能が知られている。今回の発見で、染色体異常が起きるがんの発生メカニズム解明や治療法開発への貢献が期待される。
《朝日新聞社asahi.com2007年07月27日より引用》