ヒトES細胞の国際基準作成へ 関係国・施設の成果比較
2007年06月18日08時30分
人体のどんな臓器や組織にもなり得るヒト胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を研究する世界の施設の集まりである「国際幹細胞イニシアチブ(ISCI)」は、医療現場への応用を国際協力で進めるため、ヒトES細胞の「国際基準」づくりに乗り出した。世界各地の17研究施設で異なる方法でつくられた59のヒトES細胞を初めて比較分析し、そのデータにもとづいて標準化を進める。比較データは17日付の米科学誌「ネイチャー・バイオテクノロジー」電子版に発表する。
ヒトES細胞は98年に米国で最初に作製の成功が報告され、世界ですでに数百の樹立例がある。しかし、ヒトの受精卵を壊してつくるため、国によって倫理的な扱いが異なるなど自由な交換が難しく、各株の性質を厳密に比較することができなかった。このままだと、他国で行われた実験を再現し、有効性を確認することができない。
ISCIは03年の設立時に、ヒトES細胞の国際基準をつくることを決定。米国やヨーロッパ、イスラエル、日本、オーストラリアの11カ国の17研究施設にある59のヒトES細胞を対象に、細胞表面にある17のたんぱく質の有無と93の遺伝子の活動の有無を3年間かけて集め、比較分析した。
03年にヒトES細胞を国内で唯一つくることに成功し、今回のプロジェクトに参加した京大再生医科学研究所の中辻憲夫教授によると、各施設によってつくり方などが異なるものの、9割がほぼ同じ性質で、京大にある三つの細胞株も標準タイプだった。しかし、残る1割は他にはない遺伝子が働くなどして、ES細胞よりやや分化した細胞になっている可能性がみられたという。
《朝日新聞社asahi.com2007年06月18日より引用》