20070214a

宮崎、岡山の鳥インフルエンザ、中国の渡り鳥が原因か


2007年02月14日22時40分

宮崎、岡山両県の4養鶏場で相次いだ鳥インフルエンザ発生について、農林水産省に委託された専門家による「感染経路究明チーム」(座長=伊藤寿啓・鳥取大教授)が14日開いた会合で、4カ所で採取されたH5N1型ウイルスがともに05年に中国西部の青海湖で見つかったウイルスと遺伝子型が同じであることが報告された。宮崎での今年最初の発生から約1カ月。究明チームは、中国大陸方面から渡り鳥に運ばれたウイルスが原因との見方を強めている。

このウイルスは青海湖で大量の渡り鳥を死なせたほか、欧州やアフリカにまで広がり、昨年11月には韓国でも発生した。

究明チームの現地調査によると、発生した養鶏場では防鳥ネットを張るなど、発生前から渡り鳥の侵入を防ぐ措置が施されていた。清武町を除く3養鶏場では、死亡した鶏が、鶏舎の入り口から遠い奥の方に固まっていたことが報告された。

伊藤座長は「渡り鳥によって運ばれたウイルスが、ネズミなど野生の小動物によって鶏舎に持ち込まれた可能性がある」との見方を示した。

感染経路の調査からは、渡り鳥に運ばれたウイルスが別の野生動物を介して養鶏場に侵入した可能性が浮かんできた。

冬の渡り鳥の飛来経路は主に北海道経由、日本海横断、朝鮮半島経由の3ルートがある。両県で採取されたウイルスはいずれも「青海湖型」で、韓国で先月、カモ類のふんから見つかったのも同じウイルスだった。このため、京都産業大の大槻公一教授は「中国・朝鮮半島方面から西日本に至るルートで入ってきた可能性もある」と指摘する。

とくにカモ類は感染しても多くは発症しないため、ウイルスを運びやすい。ウイルスはカモの腸で増殖し、ふんとともに排出されるという。

環境省の調査では、発生養鶏場から10キロ以内にいずれもマガモなど渡り鳥の生息が確認された。

一方で農水省の感染経路究明チームの現地調査では、発生した4鶏舎は大型の渡り鳥が入りにくいが、小型の鳥やネズミの侵入を完全に防ぐことは難しかった。チームでは今後、採取したウイルスをネズミなどに接種して、ウイルスの運び役になりうるかを調べる。

野生動物が原因とすれば、今後もウイルスの侵入を防ぐのは難しいとみられている。北海道大大学院の喜田宏教授は「侵入防止も必要だが、鶏のストレスを軽減して抵抗力を高めることや、新鮮な空気でウイルスを拡散、不活化させることが大事だ」と話す。

国内で今後も起きる恐れがある鳥インフルエンザが、人から人へ感染する新型インフルエンザに変異する恐れについて、国立感染症研究所の岡部信彦・感染症情報センター長は「不安がる必要はないが油断は禁物」と言う。今後、発生が続いても、早期発見と徹底的な処分を続ければ国内で変異する可能性は極めて低いとみる。

しかし、「慣れてしまって対応が遅くなれば変異の可能性は高まる」と、くぎを刺した。

 

《朝日新聞社asahi.com 2007年02月14日より引用》

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です