20070210b

鳥インフル、ハエが運び屋? 国立感染研、宮崎で調査へ


2007年02月10日09時49分

宮崎県内の3カ所で発生した高病原性鳥インフルエンザ問題で、H5N1型ウイルスを国内に運んだのは野鳥との見方が強まっているが、養鶏場に持ち込んだ直接の「運び屋」として、ハエ類を疑う声が浮上してきた。清武町、日向市東郷町、新富町の各発生現場はいずれも防鳥ネットなどで野鳥の侵入対策がとられていたからだ。国立感染症研究所(東京都)は04年に発生した京都府で感染力があるウイルスを持ったハエを採取しており、今回も現地調査を実施する。

1日に感染が確認された新富町の養鶏場。鶏舎の外壁には金網が張られ、防鳥ネットも設置されている。養鶏場を経営する会社は「防鳥対策は施してあり、野鳥が入るということはない」という。

宮崎県によると、1月に感染が判明した清武町と日向市東郷町の養鶏場も防鳥ネットが設置され、野鳥の侵入対策が施されていたという。

中国や韓国などから日本にウイルスを持ち込んだのはカモ類などの野鳥との見方が強い。では、鶏舎に持ち込んだのは何者なのか。

日本昆虫学会の元会長、三枝(さいぐさ)豊平・九州大名誉教授(昆虫分類・生態学)は「ハエ類を疑ってみる必要がある」と指摘する。

三枝教授によると、真冬に活動する代表的なハエ類として、オオクロバエという種類がいる。北海道から本州、九州にかけて生息し、朝鮮半島から飛来することも。鳥など動物の死骸(しがい)や糞(ふん)をエサにする。

国立感染症研究所は04年3月、鳥インフルエンザが発生した京都府丹波町(現在は京丹波町)の養鶏場の周辺6カ所で、計926匹のハエ類を採取した。オオクロバエが40%を占め、サンプル調査で20~30%がウイルスを体内に持っていたり、死滅したウイルスの断片を体に付けたりしていたという。

鶏は生きたハエを食べる。同研究所の小林睦生・昆虫医科学部長も「鶏がオオクロバエを食べて感染した可能性がある」という。

疑問の声もある。喜田宏・北海道大教授(微生物学)は「鶏がハエから感染するのか、また発症するのかどうか、はっきりしたデータはない」という。ただ、「(感染した)野鳥が鶏舎に入り込んだとは考えにくい。直接的に感染させたものがあるだろう」。

同研究所は、鳥インフルエンザが発生した養鶏場の周辺にいる水鳥やその糞に群がるハエの調査を計画中。「感染経路解明のなかで、ハエが果たす役割を詳しく調べたい」としている。

 

《朝日新聞社asahi.com 2007年02月10日より引用》

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です