ES細胞研究で国際学会が指針 倫理問題で3分類
2007年02月02日07時47分
様々な組織や臓器になり得る万能細胞として、再生医療への期待が高い胚(はい)性幹細胞(ES細胞)について、国際幹細胞学会が研究実施上の国際指針を作った。各国での適切な規制実施や国際共同研究の円滑化につなげるのが目的で、欧米や中国、日本など14カ国の研究者や生命倫理学者らが検討に参加した。1日付の米科学誌サイエンス(電子版)に掲載される。
指針は、生命倫理上の問題の大きさなどに応じて、対象となる研究を三つに分類した。
問題が比較的少ないES細胞の利用研究など第1類は、医学生命科学での通常の審査監督手続きでよいとした。第2類のES細胞の新規作製計画は、受精卵などの提供や破壊を含むため、法学や生命倫理などの有識者による厳格審査を求める。第3類は人のES細胞やクローン胚を人や動物の胎内に移植することなどで、当面禁止とした。
また、卵子提供について、提供に誘うような多額の謝礼は否定したが、実費の支払いなどは各国の判断に任せるとした。
ES細胞は、数日培養した受精卵から細胞の塊を取り出して作る。これを基に、患者に必要な組織や細胞を作ることができれば、再生医療の切り札になる可能性がある。
ES細胞研究の規制は国によって様々。米国は政府資金の拠出は禁じているが、統一的な制限はない。受精卵を「生命の始まり」と位置づける傾向が強いドイツやフランスはヒト胚研究を禁じ、韓国は法で認めている。日本も政府は認めている。今後規制を検討する国では、国際指針が参考にされそうだ。
検討に参加した中辻憲夫・京都大再生医科学研究所長は「日本の指針はES細胞の利用計画にまで厳しい手続きを求めている。過剰規制であり、研究の遅れを招いている」と指摘している。
《朝日新聞社asahi.com 2007年02月02日より引用》