20181205

豚コレラ、岐阜3例目 美濃加茂の県研究所 【名古屋】


2018年12月05日

 

岐阜県は5日、同県美濃加茂市の県畜産研究所の豚が、豚コレラに感染していることが確認されたと発表した。県内では、9月に岐阜市の養豚場で国内で26年ぶりとなる豚コレラの発生が確認され、その後、11月に同市で豚での2例目を確認。今回が3例目となる。県施設での確認は初めて。現場は、最初に感染が確認された養豚場から約16キロの距離にある。

岐阜県によると、研究所内の豚全491頭を24時間以内に殺処分し、72時間以内に埋却や消毒を行う。研究所から半径10キロ内の5農場の豚(計約9千頭)や飼料などの搬出を制限し、4カ所に消毒ポイントを設けた。

豚コレラは、人には感染せず、感染した豚の肉を食べても健康への影響はない。

研究所では、11月16日ごろから食欲不振の豚が出るなどしていた。今月3日には豚4頭に食欲不振や呼吸器の異常が確認された。県によるPCR検査を実施したが判定がつかず、5日未明に国の精密検査で豚2頭の感染が確認された。ウイルスはこれまでと同じ型だった。

9月に1例目の発生が確認されてから、研究所では畜舎の出入り口付近に消毒槽を設け、外部から敷地内への侵入を禁止するなどしていた。敷地周辺には野生イノシシ対策のワイヤメッシュも設置して防疫対策に取り組んでいたという。

研究所は県産ブランド豚の品種改良などに取り組んでおり、県産ブランド豚肉「ボーノポーク」の種豚も処分されるため、ブランド豚の生産などに影響が出るという。

県内では11月に岐阜市の市畜産センター公園で2例目の豚の感染が見つかったほか、12月4日までに野生イノシシ63頭の感染が確認されていた。こうした中で、県などは農場の防疫強化や野生イノシシの調査捕獲など感染拡大防止に取り組んでいた。(板倉吉延)

■ブランド豚、種豚も殺処分 生産再開、当面困難に

最大限の防疫対策をとっていた岐阜県の施設でのウイルス感染発覚に、県幹部は衝撃を受けた。

県庁で5日朝に開かれた本部員会議で古田肇知事は「防疫対策に十分取り組んでいるはずの、しかも県の畜産政策の要と言える研究機関で発症した。誠に申し訳ない」と陳謝した。

県産ブランド豚肉「ボーノポーク」は、県などが開発した種豚「ボーノブラウン」を交配して生産した豚肉で、霜降り割合が多いとされる。研究所から豚の精液が約10の養豚場に供給され、年間約2万3千頭が出荷されている。年間の県全体の豚の出荷頭数約16万頭の7分の1にあたる。

今回の殺処分により、今後の生産はしばらく困難になり、研究所が養豚場に種豚の精液の供給を再開するまでに1年以上はかかる見通しだという。

9月の岐阜市での1例目の発覚以来、感染ルートはいまだに判明していない。河合孝憲副知事は「豚コレラと言えばこの症状だと言われていたものが、そうした症状がはっきりしないまま出てくることがある」と感染初期の判断基準についても、困惑している状況を明らかにした。

5日朝、研究所の周辺には防疫用の白い服を着た作業員ら数十人が防疫措置にあたっていた。施設の向かい側に住む福井和子さん(73)は「(同県)八百津町や関市でもイノシシの豚コレラが出たと聞いたので、こっちにも来るのではと思っていた」と、半ば覚悟していたという。(室田賢、松浦祥子)

■県施設で発生「影響大きい」 農水相

岐阜県内での3例目の豚コレラ発生を受け、農林水産省は5日午前、豚コレラ防疫対策本部を開いた。吉川貴盛農水相は「県の畜産研究所において発生したことは、極めて重要なことだ。与える影響は内外ともに大きい」と述べ、対応の強化を指示した。

農水省は疫学調査チームを同日派遣。県の畜産研究所の職員が1、2例目の発生農場と接触の機会があったかどうかを含めて、感染経路の究明に当たる。

■豚コレラを巡る経過

8月 9日 岐阜市の獣医師が同市の養豚場で豚の不調の相談を受ける
9月 3日 岐阜市の獣医師が死亡豚の病性鑑定を県に依頼
~7日 養豚場で豚約80頭が死ぬ
7日 岐阜県の検査で豚コレラウイルスの陽性判定
9日 国の精密検査で養豚場の豚の感染が確定
14日 岐阜市内で死んだ野生イノシシの感染を初めて確認
18日 県が養豚場に野生イノシシの侵入を防ぐ電気柵の貸し出しを開始
11月16日 岐阜市畜産センター公園で豚の2例目の感染を確認
12月 4日 野生イノシシの陽性確認が県内で63頭に
5日 岐阜県畜産研究所で豚の3例目の感染を確認
【写真説明】

防護服を着用して豚舎に入る岐阜県職員ら=5日、岐阜県美濃加茂市、メ~テレ提供
《朝日新聞社asahi.com 2018年12月05日より抜粋》

 

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