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無念 鶏大量死、鳥インフルエンザ対策の矢先 宮崎県 【西部】


2007年01月13日

約2400羽の肉用種鶏が大量死し、高病原性鳥インフルエンザの疑いが出てきている宮崎県は、ブロイラーの飼養羽数、飼養戸数ともに全国1位(06年2月現在)の「養鶏県」。県は今年度から、鳥インフルエンザに対する監視態勢を強化しており、大量死は、その矢先の出来事だった。県の防疫担当者の口調には無念さがにじむ。

 

国の指針では、鶏から卵を採る「採卵鶏農場」(県内に約100軒)に年1回の検査を求めている。県は、親鶏に産卵させてヒナを出荷する、今回のような「種鶏場」(同約130軒)にも検査対象を拡大し、秋から冬にかけて鳥インフルエンザの検査を実施。血液を調べ、抗体の有無からウイルスに感染した形跡がないかを調べていた。

また、県がブランド化を進めている地鶏「みやざき地頭鶏(じとっこ)」にも検査対象を拡大。今年度から、約30農場で鳥インフルエンザの検査を始めた。

これまでの検査では、問題は出ていなかったという。それだけに、県畜産課の防疫担当者は「検査を強化していた矢先だったのに」と困惑を深めている。

3年前、山口県内で鳥インフルエンザが発生したのも今回と同じ1月。その1カ月前に韓国で鳥インフルエンザが発生していたため、感染源として渡り鳥が疑われた経緯もあり、県畜産課は「渡り鳥が北から南に向かう冬の間は要注意、との認識だった」と話す。

県は13日、環境省とともに鶏が大量死した清武町の養鶏場周辺の野鳥の生息状況を調査する。

一方、清武町は職員らが泊まり込みで町民からの相談などに応じている。12日までに安全性に関する問い合わせなど84件の電話があった。13日は朝から庁議を開き、鳥インフルエンザが確定した場合、ただちに窓口を設置。産業対策や住民対策など7班のチームを編成すると確認した。

 

●採取ウイルス再送、量不足で

宮崎県からウイルスの送付を受けて鑑定していた動物衛生研究所(茨城県つくば市)は「十分なウイルス量でなかった」として、農林水産省を通じ、県にウイルスの追加送付を要請した。県は13日午前、3検体から採取し分離したウイルスを、新たに送った。鑑定結果が出るのは13日夕以降になる見通しだ。

鶏は10日に250羽、11日に500羽、12日に1650羽が死んだ。インフルエンザの簡易検査で11日に陽性と判明。県は鶏から検体を採取、ウイルスを分離して同研究所に送り、同研究所でウイルスの鑑定を進めていた。農水省や県は強毒性の高病原性鳥インフルエンザの可能性が高いとみている。

 

◆街頭演説で触れる?触れない? 知事選候補者、訴えに差

宮崎県で鳥インフルエンザの疑いが強まっていることは、官製談合事件に絡む出直し県知事選の主な候補者の訴えにも変化をもたらしている。13日午前の街頭演説では問題を取り上げて強調する候補者がいる一方、「軽々に触れられない」と慎重姿勢の候補者もおり、温度差が目立った。投開票は21日。

「宮崎の食の安全も守ります」。午前9時半、同県日向市で選挙カーを走らせたタレントそのまんま東氏(49)は、訴えの中で簡単に触れるだけ。「鳥インフルエンザ」という言葉も使わなかった。「まだ確定していない段階で軽々なことは言えない」との判断だ。「詳しい情報が分かれば、東の知名度を生かした『宮崎地鶏の信頼回復』も訴えたい」と陣営幹部は話した。

共産公認で党県委員長の津島忠勝氏(61)はこのころ、同県都城市内の住宅地や団地などで遊説。鳥インフルエンザ問題については、街頭演説で風評被害対策や養鶏農家支援策に触れた。取材には「宮崎は養鶏農家が日本一多い。万全の対策をとらなければならない。農家が安心して養鶏を続けられるよう、損害補償や融資などを含めた手立てで応援したい」と語った。

山間地の同県西米良村の役場近くで午前8時から街頭演説をした前林野庁長官の川村秀三郎氏(57)。「(鳥インフルエンザの疑いの)情報は公表前に東京から連絡があった。担当の局長、部長に電話し、『しっかり頑張って』とお願いした」と、30年余りに及ぶ農林水産省の勤務経験を強調した。「皆さんの声を聞いて政策を進めていく」と訴えた。

元経済産業省課長の持永哲志氏(46)は午前10時、同県椎葉村で選挙カーを走らせて災害復旧対策などを中心に訴え、鳥インフルエンザについては触れなかった。取材には「原因究明を徹底的にやり、農水省とも連携して、風評被害が起こらないよう努めたい」と語ったが、陣営は「農家が風評被害について神経をとがらせている時期。問題に触れることは慎重にしたい」との対応だ。

 

《朝日新聞社asahi.com 2007年01月13日より引用》

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