クローン動物の肉・乳は「安全」 米食品医薬品局が発表
2006年12月29日21時17分
米食品医薬品局(FDA)は28日、体細胞クローン技術で作った牛、豚、ヤギの肉と乳は「人が食べても安全」とする報告書を発表した。食品として利用する際も、特別な表示は必要ないとした。世界で体細胞クローン動物の肉や乳が市場に流通した例はないとされるが、米国では近い将来、食卓に並ぶ可能性が出てきた。ただ、食肉業界などは消費者の反発を懸念し、慎重な対応を求める声も出ている。
体細胞クローンは、成長した動物の細胞の核を、核を除いた未受精卵に移植して作る。96年に英国で哺乳(ほにゅう)類初の体細胞クローン羊「ドリー」が誕生。その後、牛や豚などでも体細胞クローンが作られている。
報告書は、体細胞クローン動物の「危険性の評価」「危険管理」「産業界向け指針」の原案。健康な体細胞クローンの牛、豚、ヤギと、その子孫の肉と乳について「入手可能な大量のデータを評価して、食用としてのいかなる危険性も見いだせなかった」とし、「通常の繁殖で生まれた動物と比べ、危険が増すとは認められない」と結論づけた。羊は、検討のもとになるデータが少なく、現段階では食用にすべきではないとした。
FDAは今後3カ月間、一般の意見を広く聞き、「危険性の評価」などを最終決定する。「安全」と確定すれば、市場への出荷が解禁される。
米国では現在、体細胞クローン動物は市場に出荷されていない。関連業界が自主規制している形だ。FDAは評価などの最終決定まで、自主規制の継続を業界に求めるという。
だが、出荷が解禁されたとしても、体細胞クローン動物が実際に市場に流通するかどうか、見通しは、はっきりしない。
関連業界では「大多数の消費者が容認しないのなら、FDAはクローン動物の市場への提供に慎重であるべきだ」(米食肉協会)など、慎重な姿勢が目立つ。「消費者の反発を買えば、売り上げ減となりかねない」と反対する声すらある。
体細胞クローン動物をめぐっては、日本でも厚生労働省研究班が03年、体細胞クローン牛の肉と乳について、普通の牛と比べ「安全性が損なわれることは考えがたい」と、安全性を認める報告書を発表している。農林水産省の資料によると、体細胞クローン技術で、昨年9月までに474頭の牛が誕生している。だがクローン牛の出荷は自粛され、市場には出回っていないという。
《朝日新聞社asahi.com 2006年12月29日より引用》